6月のゲジゲジ
人気者3
「おいおい。ビドイな真野。クラスメイトだろ!?」
「名張くん……」
クラス一の人気者。
成績優秀。
眉目秀麗。
サッカー部の次期キャプテンと謳われ、女子からも男子からも大人気だ。
「名張でいいよ。」
「っていうか、何その態度!?ダサ野のくせに、何様のつもり!?壱くん、こいつずっとここで聞き耳立ててたんだよ!?」
「お前……ダサ野って。へぇ!?でも、そうなの!?……ああ、だから」
シャツ全開で額にはうっすらと汗をかいた少年は、その先は話さずにボクの股間に目を向けた。
その視線の先には目覚めたボクの獅子がいて……。
「うわぁ!!すみません!!本当にすみません!!」
「げぇ!!何コイツ!?やっぱ俺たちのことオカズにしてたの!?完勃ちじゃん!!」
ジロッと厳しい目付きでボクを睨む橋本くん。
「いや、まさか相手が男の子だとは思わなくて……その……」
「女の子想像してそうなっちゃったんだ」
「ええ……まあ、はい」
「何だよ!!男同士で何が悪いんだよ!?」
ボクは橋本くんに物凄い剣幕で怒られた。
だけど、怒っている筈のその目からは、今にも涙が零れてきそうだった。
ボクは何故かその顔に、昨日の新見さんの姿が重なって見えた。
「いいや……悪くはないよ。全然。ただ、驚いただけ」
そうだ。ボクは驚いたんだ。
昨日のパンちゃんの一件だってそうだ。嫌悪感というよりは驚きの方が大きかった。
一晩考えても辿り着かなかった答えが、窮地に立たされて呆気なく手元に舞い降りてきた。
「おい、やなぎ。止めろって」
名張は橋本くんの肩を掴むと、真剣な表情で咎めた。
「……ごめん。壱くん」
名張は橋本くんの頭を二・三回わしゃわしゃとかき混ぜると、ボクに向き直って謝罪した。
「悪かったな、真野。朝早く来たのに変な気分にさせて」
「いや、まったく」
ボクは思いっきり首を縦に振った。
二人の空気をこれ以上ギスギスしたものにはしたくない。
やっぱり、来るんじゃなかったな……。
「お前……キャラ違くないか。さては、普段は猫被ってるな!?まあ、いいや。……何なら今から抜いてやろうか!?ソレ!?」
「壱くんっっ!!」
橋本くんは今度は名張と睨めっこを始めた。
その鋭い眼差しを受ける名張はなんのその。見事なまでに受け流すと、ニコニコとボクに視線を向けた。
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