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第三の国
書簡


鈍い頭を働かせながら放棄した半日分の書簡に目を通す。


まともな書簡に紛れて送られてくる各地の監視長からの半べそ報告書や、高砂派の監視からの文句たらたらの上申書に苛立ちを覚えながら縮こまった体を伸ばし嘆息をついた。



『早めに切り上げて下さいね』


寝室を出るときに口酸っぱく源平に言われたが、とても無理そうだった。


重い頭をもたげて目を閉じる。すると、腕の中にかすかな温かさが蘇った。




細い肩に浮き出た鎖骨。いくら奴隷とはいえ同じ年代の監視と比べると、やはり骨張った体をしていた。痛みに呻きながら夢の中をさ迷っていた姿を思い出す。すがるように伸ばされた手はがっしりと俺の腕を掴み、腕の中へ誘い込んでやれば安心したように息をついて再び眠りの世界に落ちていった。


温もりの残る腕をじっと見つめた。消えていく熱が惜しいような、妙な気持ちに戸惑った。



「こんなに純情だったか!?」

熱に浮かされているんだろうか。まるで少年のような青くさい気持ちにじわじわと支配されていく自分を鼻で笑うと、実務室の扉が控えめに二度鳴った。


「入れ」


短く答え見遣った扉の先には爆発したような縮れ毛が踊っていた。









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