第三の国
二人目の犠牲者2
「何だよ!!なんで笑ってるんだよ!?俺、本当に心配して……うっ。なんであの時、チェダーに……ひっく……ついていかなかったんだろうって……チェダーいなくなってから、探してる間も怖くて……俺、怖くて………うぅっ……」
14歳のパルは目一杯の不安を抱えて、俺を探してくれたのだろう。止まらない涙と鼻水と震える体がそれを物語っていた。
俺は陵辱を受けて軋む体を起こして、パルを抱きしめた。
「いいんだよ。パルが責任を感じることはないんだ」
「でも……うっ…ちゃんと見てればチェダーを守れたんだ!!それな…のに俺、夢中でケン……ひっく。ケンカしてて、チェダーの危険に気がつけなくて……情けないよ……ひっ」
俺の背をキツく握りしめながらパルはしゃくりあげ、本当に申し訳なさそうに俺の肩に顔を埋めた。涙が鎖骨を通って胸を濡らす。
「お前は悪くないよ。探してくれて、ありがとう。パル」
そう言って俺はパルが泣き止むまで、頭や背中を丁寧に撫で続けた。時にはとんとんと子供をあやすようにその背を叩き、日に焼けた髪の毛をすいてやった。
「いつまで泣いてんだ!?根性見せろよボウズ」
少し乱暴な言葉に俺は辺りを見回した。男は俺が寝ている寝台の横に設置されている椅子に腰掛け、蜂蜜酒を手にこちらを見ていた。
「なんだよぉ!!塔長だと思って偉そうに……新米のぺーぺー長のくせに!!ふんっだ!!」
「立場を抜きにしても、俺は人生の先輩だ。なあ!?もじゃもじゃ!?」
「うっ……ひっく。はい!!あけびさんは、酒癖は悪いですげど……ゔっ……立派な人生の先輩でず!!」
「お前は……一言余計なんだよ。それに何でお前まで泣いてんだよ!?」
「ううぅっ……もらい泣きです……ひぐっ」
「げっ……最悪。カッコ悪ぃ!!……あぁぁぁ!!俺、もう泣かない。何があっても絶対に泣かない」
人前でワンワン泣いた気恥ずかしさと、もらい泣きまでされて決まりが悪いパルは悪態をつくことで懸命に誤魔化した。
そして、ごしごしと袖口の内側で目元を拭うと、男らしく眉を上げて顔を引き締めた。泣かないと宣言した気持ちは固く結ばれたようで、俺はそれを見届けてやっとホッと一息ついた。
「ところで……ここは!?」
広間でも大部屋でもない。見知らぬ部屋は豪華な内装に包まれていて、今まで横になっていた寝台もふかふかしている。奴隷棟でないことは分かるのだが、思い当たる場所はない。
「塔長の部屋だよ」
これまで一言も発しなかったエメンタールが、やっと口を開いた。
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