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第三の国
ゴーダの想い8

「ひいっ!!た、高砂様……」

真っ青になって恐怖の色を浮かべた監視が、俺に斬られた腕を押さえて涙していた。


でっぷりと太った高砂は座り込んだ監視の目線まで屈むと、まるで暗示でもかけるような不思議な声音で話し出す。


「私の部下に、奴隷に命乞いする腰抜けはいらん。お前はどうだ!?……私の命が守れるか!?んっ!?」


「もちろんで御座います!!高砂様のためであれば、どんな命が下ろうとも本望で御座います」



「そうか。ならばこの場で死んで見せよ」



「なっ!!な、何を仰るのですか!?高砂様」



「私の下監に、奴隷に劣るクズはいらないのでな。くっひひ。それとも何か!?先ほどの言葉は嘘か!?」



「いいえ。……し、しかし……」



愚劣な二人のやり取りを片隅に、俺は剣を手に辺りを見渡した。


酒樽に保存食、鎧など。やたらと物がが積まれていて見たところここは物置部屋のようだった。


部屋にあったチェダーの服と寝具用のシーツを掴み、俺はぐったりと横たわる親友の元へと急いだ。



「……チェダー……」


月下に見る友人は、弱く、脆く俺には映った。


俺はチェダーを戒めている縄を解いてやり、ゆっくりと体を反転させた。


青ざめた顔や痣のついた体には大量の精液がつけられていて、俺は手にしたシーツでチェダーの体を丁寧に拭った。



一滴も残らぬように、あちこちに目を向けた。



それから高砂たちのいた方でドサリという鈍いしたかと思うと、先ほどまで喚いていた監視が力なくダラリと床に転がって動かなくなった。



「茶番は終わりか!?」



俺の言葉に、月に照らされた高砂のこめかみがピクリと動いた。


俺は手にした剣の柄をキツく握りしめて、高砂を睨み付けた。



「くっひひひひ。憎しみに満ちたいい顔だ……悪かったなあ、ゴーダ。大事な大事なチェダーをそんなにして。泣き叫んであまりに可愛いかったものでな……ひひっ。しかし見物だった。香を使ってやれば、もっとしてくれと淫らな本性を出して来た!!くひひっ」


その言葉に、俺は剣を手に飛び出した。



殺してやる。



その確かな殺意だけが、俺の全身を支配していた。








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