第三の国
ゴーダの想い5
「俺は軍に入って総司令官になる!!そんで、リコッタだけじゃなく、パニールを……国を守るんだ!!和神やカカ王国なんて、でっかい国が攻めてきても街のみんなを守れるくらいに……強くなるんだ!!」
「お前ね……総司令って、軍の一番上に立つ人間だぞ!?わかってるのか!?」
「なる!!俺はなるったら、なる!!絶対だ!!見てろよお前ら」
「わぁ!!すごい!!ゴーちゃん、一番になるの!?かけっこみたいに!?」
「……チェダーくん。かけっことは比べられないくらいに大変なんだよ」
「そうなの!?……じゃあゴーちゃんには無理だ。ねっ、エッちゃん!?」
「「ね〜!?」」
息を合わせる二人を見て、俺たちはまたケンカになった。
「あっ!!……わぁ、うわあぁぁぁ!!ゴーちゃん、エッちゃん!!見て!!見てよ!!」
取っ組み合う俺とエメンタールの服の袖を引っ張りながら、チェダーが辺りを指差した。
「何だよ、チェダー。うるせ……すげえ……すげえ!!」
「ホタルだ!!」
ベール川のほとり。草むらの中には、小さく光る無数のホタルがいた。
「こっち、こんなにいっぱいいるよ〜!?」
蛍火に照らされたチェダーは、嬉しそうに叫ぶ。
「いつの間に……!?こんなに沢山いるの、俺はじめて見た」
ホタルの数に圧倒されながら、エメンタールが呟いた。
「よぉし!!俺はこのホタルに誓う!!絶対にパニールの総司令官になる!!」
「ははっ。むりむり。俺は世界一の大商人になる!!」
「何だよ。まずはお前も軍に入って鍛えろよ!!外には海賊とか盗賊とか、悪い奴らも怖いやつらもいっぱいいるんだぞ!?」
「そうか。じゃあ、まずは軍に入ってゴーダより先に総司令官になってから大商人だ!!」
「何でだよ!?俺の時は無理だって言ったくせに!!」
「お前は無理だけど、俺なら出来る!!」
「じゃあ僕は、軍に入ってから植物と昆虫の博士になる!!」
「よぉし!!お前ら、絶対に夢を叶えるぞ!!」
「「「おぉぉー!!!」」」
ホタルに誓うなんて今考えれば馬鹿げてるけど、本当に。
本当に願いが叶いそうなくらい沢山のホタルがいたんだ。
あの頃の、まだ幼い俺たちは、どこまでもただ純粋で、この国の平和を信じて疑わなかった。
あれから起こる戦争も
失うものの大きさも
まだ、何もわかってなかったんだ。
15歳になった時。
俺たちは夢見ていた軍人ではなく、誰よりも汚くて賎しい奴隷になっていた。
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