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第三の国
ゴーダの想い3

「こっちだ!!チェダー、エメンタール!!」


近道のため、俺たちは林の間を抜けていく。道無き道を下って、目指す先はベール川。夜の探検という刺激的な遊びにワクワクして、俺の進む足も自然と速くなる。


「おい、ちょっと待てってゴーダ!!」



「うわぁ……ゴーちゃん、エッちゃん。いいにおいだねぇ!!」



俺の後をエメンタールは文句を言いながら、チェダーは緑の香りに心を奪われながら順についてくる。



「こらっ!!チェダー。ちゃんとついてこ……ぐへっ!!いってえぞ、バカエメンタール!!」



「うるせえ!!待てつってんだろうが!!一人でズカズカ走りやがって。体力バカめ!!」



振り返ってチェダーに注意をした俺の背に、エメンタールが渾身の力を込めて膝蹴りを喰らわせた。



「うわぁ……カブトムシだ」


地面に伸びた俺の頭上からは、チェダーの感嘆が何度も漏れた。



「ゴーちゃん、ちょうだい!!」


「はあっ!?」


「ゴーちゃんの背中についてるよ!!」



「うわっ!!本当だ!!おい動くなよ、とってやる!!……そんで蟲飼いのおじじに売りつけてやる!!」



「ああ!!ずりぃぞ、エメンタール!!」



「やだ!!僕にちょうだい!!」


俺の背中についたカブトムシをエメンタールがとると、俺たちはギャーギャー騒ぎながら三人で揉み合いになって一匹の蟲を取り合った。




当時、ガキ大将の俺はよくエメンタールとケンカをしていた。今でも口ケンカはしょっちゅうだが、この頃のケンカは手を出すことがしばしばで、お互いに生傷が絶えなかった。エメンタール自身も昔は負けず嫌いで守銭奴、その上に口が悪いくらいで、まだ可愛げがあった。


今は表面上は優等生。俺たちの前では、からかい好きの厄介な色魔だ。


チェダーはというと、今の常識的なあいつとは違って……ちょっと、ボケっとした少年だった。リコッタに生まれた子供たちはみんなこの地の豊かな自然が好きだが、チェダーはその中でも1・2を競う草木や虫好きの変わった子供だった。




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