第三の国
ゴーダの想い
side ゴーダ
「ゴミが監視棟に何の用だ!?」
棟の前には宮殿の門番ほどではないが、見張りがついている。警戒心を全面に押し出しながら、監視たちは仕事をこなす。
「なんだ、おい。まだ青臭いガキじゃねえか。フッ……ハハッ。大方こいつ、高砂様がご用意された余興にはめられたんじゃねえの!?憐れ……ぐあはっ」
見張りの当てずっぽうな予測に、俺は最後まで聞かずに殴りかかった。
「どうでもいいんだよ、そんな事は!!……おい、返せよ。俺の宝物」
「な、何をぬかしてやがる!!」
「チェダーと高砂はどこだ!?」
「し、知らねえ……俺は知らねえんだ!!」
「バックレてんじゃねえ!!!!」
「ほ、本当だ!!本当に何も知らないんだ!!」
俺は相手をいたぶる手は休めずに質問を続けた。そして見張りがチェダーの居場所を知らないと聞くや否や、発煙筒を片手に監視棟に乗り込んだ。
「待て、馬鹿野郎!!」
監視の一人が引き止める。
馬鹿野郎か……確かに俺は、賢い生き方をしていない。
お節介をやいてはあちこちに首を突っ込み、その反動でいつも人より多くの仕打ちを受ける。
高砂から受けた拷問の数も、リコッタでは1・2を争う。
(だけど……親友の貞操がかかっているのに助けにも行けないなら、馬鹿で構わねえ!!)
強く拳を握りしめると、俺は走る速度をあげた。
浴場、訓練場、大広間。
途中で一緒にチェダーを探しているエポワスの監視たちとすれ違った。だが、肝心のチェダーの居所はまだ誰もわかっていないようだった。
(チェダー……)
「ハァ…ハァ、どこだ!?」
(無駄に広い……エメンタールとパルの三人だけじゃ、とても探しきれねえ)
次の扉だと、勢いよく扉を開けた遊技室では広間の騒ぎに参加しなかった庭園や裏門の監視たちが賭け事に興じていた。
(チェダー。チェダーお前、今どこにいるんだよ)
「貴様!!奴隷だろう!?何故ここにいる!?」
「邪魔だ!!どけ!!」
詰め寄る相手に容赦なく回し蹴りで対応し、俺は全速力でしらみ潰しに監視棟の扉を開けていった。
(どこだよ!?チェダー!!)
宴の間では、エポワスの監視たちが言っていたように歓迎の宴が行われた後のようだった。
酒樽が用意され、監視たちが気持ち良さそうにのびている。
伸びている人間より明らかに多い盃の数。
上座には二つの席が設けられ、俺はそれが高砂とあけびのものだとわかった。
「クソがっ!!!!」
用意された高砂の席を見ると、抑えられない怒りが後から後から湧いてきた。
「どこだ!?チェダー!?返事しろ!!チェダー!!」
我慢しきれずに、俺は形振り構わず叫びだした。
奴隷が監視棟を歩き回ることはまずない。そのため俺を見つけた監視たちは目を光らせて迫ってくる。
棟のあちこちで監視たちの戸惑いの声と、金属同士がぶつかる嫌な音がする。
一方で、ドスンドスンという大きな音に続いて、天井からは土くずがパラパラと落ちてきた。
(エメンタールかパルだな……やるな)
側にいなくても感じる仲間の存在に俺は多少、冷静さを取り戻した。それでも焦る気持ちは募るばかりだった。
「チェダー!?チェダー、どこだ!?返事をしろ!!」
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