第三の国
見失った友3
「行くぞ」
ゴーダの合図で俺とパルは広間を駆け出す。まだ意識を保っている高砂信者の数名が、そんな俺たちの足止めにかかった。
「貴様ら!!奴隷が勝手に動くとは身の程知らずにも……」
「どけよ」
「捕らえろ!!後で高砂様にご報告……」
「退けっつってんのが聞こえねえのか!!!」
脳天をぶち破るようなゴーダの大声と共に、高砂信者の監視たちが床に倒れこんだ。
「落ち着けよ」
剣を奪って数人の監視を斬りつけたゴーダを、ただ一人、眉ひとつ動かさずに涼しい顔をしていたあけひが制した。
「うるせえ!!和神の犬が!!敵は黙ってろ!!お前には関係ね……ぐっ」
「こいつ!!いい気になりやがって!!あけび様へのそれ以上の冒涜は、許さねえ」
「こいつらも黙らせましょう。あけび様」
エポワスの監視たちはヒラリと剣を翻し、俺たちへ剣先を突きつけてきた。
暴言を浴びせた当のゴーダは、あけびによって爪先立ちになるまで胸ぐらを締め上げられていた。
「ゴーダ!!」
「あぁぁっ!!コラー!!ゴーダを離せ!!」
周りをエポワスの監視たちに囲まれながら、俺とパルが叫ぶ。
「もう一度言う、落ち着け。お前たちもだ」
あけびに睨まれた俺とパルは、足が地中深くに根を張ったように動けなくなった。それからあけびは、目線だけで下監たちに剣を下ろすように促した。
「軽々しく他国の人間を貶すものじゃない。それに、そんなに頭に血が昇ってたんじゃ、足元に大切なものがあったって見落とすぞ」
「くっ!!」
「……しかし、お前にとって彼は余程大切な存在なんだな」
あけびは、手荒なことをして悪かったと大人しくなったゴーダから手を引いた。赤くなった首もとを、ゴーダは軽くさすっている。
「お前とあの子には昼間の貸しもある。ここはひとつ手伝ってやるか!!……おい、人探しだ。一班を集めて男の子を探せ」
「えっ!?」
「……う、嘘だろう!?」
「おぉぉ!!ペロペロいいやつだ!!」
思わぬ手助けに三者三様に驚けば、あけびは先を続けた。
「青みがかった髪と瞳が特徴だ。おそらくは宮殿長と一緒にいる。半分ずつに別れ、奴隷棟・監視棟を手当たり次第くまなく調べろ!!いいか。何としても、間違いが起こる前に探し出せ!!見つけた者は発煙筒で知らせろ!!」
「「「「御意」」」」
きびきびと滞りなく動く一団。遅れをとるまいと足を踏み出せば、ゴーダは発煙筒を片手に既に広間を出ていた。
「時間が過ぎれば、見つけた時には身体中を貪られて無惨な姿になっている可能性が高い。……ここを片付けたら俺も行く。出来るだけ早く見つけ出せ」
あけびは走り出そうとした俺の肩を、強引に後ろから引き寄せて囁いた。
「礼なんか言わねえぞ」
癪だった。
(感謝なんかしねえぞ。こいつは監視だ!!)
「ああ。単なる俺の気まぐれだよ」
あけびは軽く微笑むと、混乱する広間の指揮を取り出した。
(チェダー、無事でいろよ)
俺も渡された発煙筒を握りしめ、闇の中へと親友を探しに駆け出した。
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