第三の国
リコッタの奴隷6
四方からとぶ自分を諫める言葉も今の俺の耳には全く入って来なかった。
ただ目の前でひっくり返っているこの変態が許せなくて、身体を押さえられたままでも俺は構わず力の限り暴れ続けた。
何人かが俺の蹴りや頭突きをくらって呻き声を上げたが、それでも俺を拘束する腕の力は少しも緩まらなかった。
夏場でもヒヤリと冷たいチェダーの指が俺の手首にそっと触れた。
俺が振り返ってチェダーの様子を伺うと、チェダーはいつもの柔らかい笑顔を向けた。
その姿を見て俺はやっと全身から力を抜くことができた。
矢倉から夕食を告げる鐘の音が繰り返しけたたましく鳴り響くーー
高砂もここが区切りだと判断したのだろう。勢いよく立ち上がると
「はっ!!お前等のような賎しい家畜以下の奴隷はただ黙って天主様と和神の繁栄のために働いていろ!!役立たずのクズなりにな!!」
そう捨て台詞を残し、肩をいからせて監視室の方へと姿を消していった。
しばらくしすると監視役どもが大方いなくなり、辺りは奴隷だけになった。
「悪かった。チェダー。大丈夫だったか!?」
俺が咄嗟に後ろへと引っ張ったのでチェダーも尻もちをついていた。
手を差し伸べてチェダーを助け起こす。
「平気。それよりご飯食べようゴーダ!! 広間でエメンタールも待ってるよきっと。」
俺の問いに満面の笑みでそう答えたチェダーは俺の腕をとると、急かすように広間へと連れて行こうとする。
「いよっ!!お熱いねお二人さん!!」
「ヒューヒュー。」
そんなアホな冷やかしをされながら他の奴隷達と何人かで広間に向かった。
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