第三の国
見失った友
side エメンタール
「ハァ…ハァ……着いた」
俺は扉にたどり着いて思いっきり横に引いた。
全開になった扉の外の空気を、肺いっぱいに送り込んだ。
体をつねっては、気を飛ばしそうになるのを懸命に堪えた。
まだ、やることがある。
奴隷も監視も、もう三分の一ほどしか意識を保っている者がいなかったがそれでも俺は声を張り上げた。
「お前ら!!早く外の空気を吸え!!」
まだ立てる者はヨロヨロと自分で広間を後にし、そうでなければ手を貸してやった。
高砂の計画を予め知っていて、今はお気に入りの奴隷たちの体を弄んでいる一部の上位監視たちは邪魔が入って目くじらを立てた。
もちろん中には俺の存在など構わずに、ひたすら快楽を貪っているやつもいる。
「奴隷の分際で生意気な!!」
襲いかかってくる監視に、俺は相手が今まで使っていた逸物めがけ、思いっきり蹴りを入れた。
監視は股間を押さえてうずくまった。
広間を見渡せば、ゴーダ組やチェダーも扉を開けるのに成功したのか、大分煙が減っていた。
「うぉぉぉ!!」
「あぁ!!ずるいぞ、ゴーダ。それは俺の獲物だったのに!!」
ケンカっ早いゴーダは、俺よりも先に始めていたらしい。
「アホ」
そう呟きながら、俺も次々と向かってくる監視に拳を食らわせた。
まだ動けるやつは俺に続き、広間は乱闘になった。
丸腰で剣に向かっていくため、腕や体に切り傷が出来る。
だけど、上手いこと相手の懐に入り込んで武器を奪ってしまえば勝負の行方はわからない。
相手の足を狙い動きを封じ、上から襲いかかってくる監視には顎に頭突きをくらわせた。
右から二人。
左から一人。
剣の柄で右から来た相手の腹に一撃食らわせ、もう一人から斜めに繰り出された剣を受け止めた。
左から来た監視は剣を持つ手も震えていて、ヤケになって向かってくるのを顔面に一発入れて大人しくさせた。
足元に倒れていた監視につまずいてひっくり返りそうになった俺は、残った監視の服を掴んで道連れにした。
「貴様っ!!このっ……」
俺の上に倒れ込む監視の唇を奪って
「今度は別の形でこうなりましょうね」
そう言うと、怯んだ監視の隙をついて首に手刀を繰り出した。
「くっ……あっ」
「その声も、次はもっと色っぽくお願いします」
俺はずっしりと重くのし掛かる監視の背を、ポンポンと優しく叩いた。
「……お前、何アホなこと言ってるんだ!?」
「スケベだ〜!!もう、エメンタールったら。や・ら・しぃ〜!!ウシシッ」
アホ二人組も粗方片付け終わったらしく、気付けば俺の近くまできていた。
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