第三の国
チェダーの嘆き8
「うっ……ああ……」
「はあ。気持ちいい」
「目が……回る……」
バタバタと周りにいる奴隷たちが大きな音を立てて倒れ出した。
「高砂様ぁ!!こ、これは一体!?」
「催眠香に……何かが混ぜてある……くっ。気が……」
「監視長様。何故このようなことを……」
倒れたのは奴隷たちだけではなかった。何も知らされていない一部の監視たちも続々と床に倒れ出したのだ。
俺たち三人は出来るだけ体勢を低く保ち、煙を吸い込まないよう必死に息を止めた。
監視たちの様子を見ると、高砂と上位監視だけが口と鼻を布で押さえ、門番や若い監視たちは膝を折って床に手をついていた。
「高砂様ぁぁ!!何故このような事をなさるのでございますか!?」
すがるように足元にへばりついた監視を、高砂は一蹴した。
「触るな!!穢らわしい!!私だけの命を聞けぬ馬鹿に用はない。お前たちもだ門番!!」
「お待ちください。あれは塔長の独断でして……従うしかなかったので御座います!!」
「我々のところにも物凄い勢いで早馬が駆けてきたかと思えば、門を強行突破され……打てる手がなかったのです!!高砂様。どうか、どうかお許しを!!」
「ひっひっひっ。見苦しいなあ!!んっ!?大国和神の監視ともあろう者が!!……分からんのか!?貴様らも私にとってはそこに転がっている奴隷たちと何ら変わらぬというのが!!
高砂の情け容赦ない言葉に監視たちは涙を流していた。
「……目障りだ。やれ」
「はっ!!」
上位監視たちは頭を下げて返事をすると、それからは門番や若い監視を散々鞭打った。
「うぁぁぁぁ!!」
「ぐうっ!!ひいぃぃぃ!!」
高砂は宮殿奴隷たちを一通り睨みつけると低い声で言った。
「同じ目にあいたくなければ、お前たちも誰の下につくかはよく考えるんだな……くっひひっ」
監視たち全員の顔色が悪くなっていった。
「おお!!いかん!!ひひっ。最近お気に入りを見つけてな。中々当たらないんで痺れを切らせていたところだ。……お前たち、灸はこれまでだ。好きなのを抱いていけ。淫香も混ぜたから良い具合に乱れるだろう。何ならお前たちも多少吸っておけ。くっひっひっひっ」
「こ、ここで抱くのですか!?」
「無礼講と言っただろう!?……それともお前たちはヤメるか!?」
そう聞かれた監視たちの目は先ほどとは打って変わって色めき立った。
ゴクリと唾を飲み込み音が今にも聞こえてきそうなほどだ。
「せっかく皆が気持ちよく寝ているのだ。くっひっひ。リコッタで烙印帳簿の管理をするか」
高砂は手にした半紙を大きく広げた。
(…………白紙!?)
「冗談じゃ……ねえ!!」
「ゴーダ、今はこの香を……消すのが先だぞ!!」
既に半数以上の人間が床に突っ伏していた。
焚き続けられた香は消されたけれどその匂いは広間全体を満たし、息苦しさは増すばかりだった。
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