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第三の国
チェダーの嘆き6

それからパルは勢いよく食事をかき込むと、友達を見つけて元気よく広間を駆けていった。



「……おい、エメンタール!?パルは何でああ元気なんだ!?」



ゴーダが話すたびに、振動が耳から頭に響く。



「さあな。上手いこと立ち回ってるからだろ!?」



「そんな器用なことが出来るヤツか!?」



「少なくともお前よりは数倍器用だな。……今日だって俺が捕まってる中、どっかで静かに目を光らせてたしな。しかも、自分はちゃっかり一番に持ち場に戻ってやがったから、あいつだけ鞭をくらってねえんだよ。まあ、これは俺も他のヤツに聞いた話だけど」



「そうなんだ……パル」



俺は二人の話を黙って聞きながら、たまに一言二言、相づちを打った。



「そういえばエメンタール。お前は何であの時、騒ぎの中心にいたんだ!?」



それは俺も聞こうと思っていた。



「ああ……アレか」



「何だよ、言えないような事なのか!?」



「いや、そういうんじゃないけど……」



「おっ!?あけび様の話か!?いやあ、いい人だよな。あけび様!?」



「はぁ!?どこがだよ!?ただの変態だろう!!」



隣から話かけてきた男に、エメンタールは不愉快極まりないと声を荒げた。余程何か腹に溜めていたのか、エメンタールが怒るのは本当に珍しい。



これ以上、触れてはいけない。俺もゴーダもそう判断すると、この話題は打ち切った。



「……俺、気になることがあるんだ」


ゴーダとエメンタールは俺の前置きに静かに耳を傾ける。



「どうして高砂は、今日一度も新塔長の事を話さなかったんだろう……だって考えてもみろよ!?あけびの行動を知ったら、嫌味の一つも飛んできて道理だろ!?」



「その代わり、飾り棒が容赦なく飛んできたじゃねえかよ。……単にアイツの話をするのも気に食わなかっただけだろ!?」



「だと良いけど……」



「確かに。高砂の性格を考えると、手緩い印象だな。あいつなら、自分の領域が侵されたことに激高して監視もろとも奴隷全員を拷問行きにしてもおかしくない」



「うん……」



「何だよ、チェダー。まだこれから何かが起こるって言いたいのか!?」



真剣な顔でゴーダが聞く。


「わからない……無責任にしゃべってるのも自覚してる。……ごめん、二人を混乱させるような事を言って……」


「寝ろ。疲れてるんだよ、お前」


飯はとっといてやるから。ゴーダはそう言って、殆んど手をつけていない俺の食事に目を遣った。



それから俺は、遂に我慢しきれずにゴーダの肩で少し眠った。




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あきゅろす。
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