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第三の国
チェダーの嘆き4

塔の方では、大きな人垣が出来ていた。


監視や奴隷が入り交じり、息を呑んだり緊張した様子で、静かに中央にいるであろう高砂とあけびを見守っていた。



ただ野次馬のごとく持ち場を離れた一部の監視たちの目だけは嬉々として輝いていた。



「一部の監視は楽しんでるみたいだね……」



「ああ、アホだな。ありゃ」



監視を前にしているが、相手は子供だから口からは自然と本音が飛び出す。



(まあ、ゴーダの場合、相手が高砂でも本音しかぶつけないけど……。)



「見えねえな……もうちょっと前に行くぞ!!」



「はいっ!!」


ゴーダに続く少年は勢いよく返事をすると、小走りでその後に付いていく。


(元気出たみたいだ。よかった)



中央にいた高砂とあけび。


ただ、驚いたのはそこにエメンタールもいることだった。



「何やってんだよ、エメンタールのやつ」


状況が把握出来ない苛立ちと、親友の身を案ずる思いがゴーダから伝わる。



「分からない。何かしたのかな!?」


心配なのは俺も同じだ。


普段から滅多なことではボロを出さず面倒事の矢面には立たないエメンタールだからこそ、こんな真っ昼間から騒ぎの中心にいるのが心配でならなかった。



俺とゴーダが見詰めていると、視線を感じ取ったのかエメンタールがニッコリと微笑んだ。



隣でゴーダが小さくほっと息を吐く。



「大丈夫……そうだね」


「ああ。あいつ!!後で何があったか絶対に聞き出してやる」


「うん、そうしよう。俺も何があったか気になる」


そう二人で決めたところで、高砂とあけびの会話は終了したようだった。



『貴様ら!!誰が持ち場を離れていいと言った!?お前たちもだ監視役!!』


すかさず、高砂の怒号が飛ぶ。


「あぁぁぁ!!あげびざん〜」

隣ではやっと目当ての人物に出逢えたもじゃもじゃ少年が嬉し泣きをしていた。


「早く行きな。君が働くのはきっと向こうの塔だよ」


俺がそう言うと、少年はまた感謝を述べた。


「いいから、行け。もう二度と遅れをとるなよ!?」


ゴーダがそう言うと、少年は満面の笑みで返事をした。



それからは案の定、高砂の怒りは真っ先にゴーダに向かい、作業終了まで宮殿造りに関わる全ての者が休みなく働かされた。



その間も高砂の機嫌は悪くなる一方で、地獄のような半日だった。




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あきゅろす。
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