[携帯モード] [URL送信]

第三の国
人間扱い5

「助かったよ二人とも。感謝する」


軽く頭を下げてきた監視長に、俺もチェダーも、恐らくその場にいた総ての奴隷が驚愕した。



「お前らは早く広間に向かいな!!腹減ってるだろう!?」


その言葉に、正直者のリコッタの奴隷たちは足早に宮殿を後にした。



「ありがとうございます。仲間を助けて頂いて」



あらかた人が居なくなってから、チェダーが深々とお辞儀をした。



「あのまま手当てもせずに放置されたら……全員死んでしまってたかも」



俺は酷い火傷を負った仲間たちを思い返した。



確かにこいつの行動は俺たち奴隷のためなのだろう。



だが、どうにも解せなかった。



「あんた。何を企んでるんだよ!?」


俺の物言いにチェダーはぎょっとして、目を白黒させた。


「奴隷に恩でも売ろうっていうのか!?……それとも、ただの馬鹿なのか!?」



「おい、ゴーダ!!」



俺を諫めるチェダーを制止したのは、あけびだった。



「何のために俺たちに尽くす!?目的は何だ!?」



かなり大きな声を張り上げたから、エメンタールやパルがいる塔の方まで聞こえたかもしれない。



監視が奴隷に優しくする時は必ず裏がある筈だ。



さっきの高砂がいい例だ。


水を渡すふりをして、中は熱湯だった。



敗戦からずっと奴隷をしてきた俺が気付いたのは



『俺たち奴隷は決して人間扱いされない』


ということだった。



好きな時に虐げられて折檻を受け。



時には、甘い言葉で罠に嵌められ嘲笑われる。



夜になれば野郎の逸物をケツに突き刺し、相手の気が済むまで散々体を弄ばれる。



その身に受ける苦痛は違えども、俺たち奴隷の命はいつも監視たちの掌の上で転がされている。



そんな生活をしていると、人を疑うことが当たり前になった。



相手が敵なら特にだ。





[*前へ][次へ#]

16/62ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!