第三の国
不機嫌な高砂
side ゴーダ
『働け!!働けぇぇ!!』
宮殿正門。
今日も高砂の鞭は絶好調だ。
「うあぁぁぁ!!」
「お、ぉ、ぉ、お許しを……ひいぃぃぃ!!」
「ぐっ……あっ」
『お前たちのようなゴミグズは、働くことによってのみ価値があるのだ!!くひっひっひっ。さあ、身を粉にして働けぇぇ!!』
鞭打たれた男たちが次々と身を屈める。
「ぐあっ!!あぁぁ!!」
「ぎゃあぁぁ!!」
今日の奴隷たちは、いつにも増してむごたらしい仕打ちを受けていた。
一度に何発も革紐が跳ぶのは変わらないが、今日の高砂はどこか様子が違う。
目の色を変えて奴隷たちを虐げるその姿は、狂気に満ちていた。
朝から熱気を含む暑さで日差しが強く、少し遠くを見れば、逃げ水が見える。
「あ…っ…み……水……」
朦朧とする意識の中で、一人の男が歩き出す。
「水……水をくれぇぇ!!」
渇いた喉から発せられる言葉はどこまでも悲痛なものだった。
男は若い監視に竹棒で繰り返し打たれた。
今日は、宮殿に属する奴隷だけがいつもより早く叩き起こされ、食事も取らされぬまま働かされた。
俺たちは猛暑の中、ろくに水分も採っていない。
体内からは汗が吹き出し、俺のからだは脱水症の寸前だ。
隣で浅い呼吸を繰り返すチェダーも、随分と苦しそうだった。
「チェダー、大丈夫か!?」
「うん。なんとか」
そう言った矢先、チェダーの隣で作業をしていた男が倒れた。
俺たちはぐったりと横たわる男に手を差し伸べようとしたが、監視の鞭がやって来て男を引きずって行った。
介抱される訳ではない。
目を覚ますまで折檻されるのだ。
「水か……そういえば、今日はまだお前たちに飲ませていなかったな。飲みたいか!?」
先ほど悲痛な叫びをした男の前までくると、高砂は甘い言葉で囁いた。
「………は、はい。一口で構いません……どうか。どうか」
泣きながら訴える男を前に、高砂は部下を呼びつけて耳打ちをした。
指示を仰いだ監視は、一度びくっと肩を揺らすと、近くにいた数人の監視と姿を消した。
「そこで待っていろ」
高砂がそう言うと、男は勢いよく『はい!!』と答えて正座した。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!