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第三の国
新たなる監視長8

「さあ、仕事だ!!持ち場に戻れ。お前もな、もじゃもじゃ」


あけびは愉しそうに俺の背をポンと押した。



「はいっ!!頑張ります!!」



もじゃもじゃは張り切った様子で、あけびご一行様の輪へと駆けていった。



「失礼します」



俺は頭を下げると、元居た場所を振り返った。



俺以外はみんなとっくに作業に戻っている。



持ち場を離れて監視たちに鞭打たれたのだろう。どいつも時折、背を擦りながら作業をしていた。


「あうっ!!ひいっ!!お許し下さい!!」


色白男が懲りずに今日何度目かの鞭を受けていた。



一部の監視たちは俺を叱りつけようにも、あけびが側にいるため出来ないでヤキモキしているようだ。



「約束、忘れるなよ」



走り去る俺の背中にあけびはそう残し、馬の手綱を引いて一行の輪に加わった。



持ち場へと戻った俺は監視にキツイ一発をくらうと、それからは黙って作業を続けた。






あの男は……どう判断したらいいんだ!?




実に、掴み難い男だった。


自分の調子を狂わされたのにも腹が立つ。



黒目・黒髪。



見た目通りの堅物なのかと思えば、バカみたいに俺たちに挨拶を求めて来たりする。



その上…………勝手に変な約束を取り付けやがる。




だが、洞察力は鋭い。


年配の高砂相手にも物怖じ一つしない。



あの様子なら部下にも慕われているはずだ。



「…………やっぱり、しばらく様子見だな」



「その前に、夜這いされないといいなぁ。エメンタール。ウッシッシッ」



いつの間にか隣にいたパルにドッと疲れが湧いてきた。


さも愉快そうに、パルは小声でくつくつ笑う。



「パル……お前は、どんだけ地獄耳なんだよ。」



「俺、目と耳は本当にいいんだぜ!?だからバッチリ聞こえたし……んふっ。あいつがエメンタールの耳をペロペロしてたのも見た!!」



(何が『んふっ』だ!!……偽名はこいつの名前にしておけば良かったか!?)


ジットリとした目でパルを睨んでいると、二人して監視から灸を据えられた。



「いってぇ……エメンタールが、えっちな事してるからだぞ!?」


(ったく。まだ言うかこのガキ)


「いいから、作業しろ。これ以上無駄に傷を負うな」



パルの背中をさすってやると、最初は苦し気に顔をしかめたが、やがて黙って俺に従った。



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あきゅろす。
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