第三の国
新たなる監視長6
「ほお。それは失礼。無粋な真似をした。到着早々に相手を決めているとは……流石ですな。あけび殿」
高砂が再びバカにしたように鼻を鳴らした。その声に俺はゴーダたちから視線を外した。
「いえいえ。高砂監視長こそ、昼夜問わず皆を悦ばせる巧みな技をお持ちだそうで。是非ともご教授願いたい」
相変わらず俺の腕を掴んだまま、あけびは柔らかに告げた。
褒め言葉のようだが、俺には昼は鞭狂い、夜は色情狂だと貶しているようにしか聞こえなかった。
高砂は偉そうに胸を張ると、鞭をひとつ大きくしならせた。
「挨拶はこれくらいにして、早速仕事をして頂くとしよう。……貴様ら!!誰が持ち場を離れていいと言った!?お前たちもだ、監視役!!」
急に怒鳴られた奴隷と監視たちは、蜘蛛の子を散らすように各々の持ち場へと戻って行った。
高砂もその後に続いて宮殿に戻る。
「ゴーダ!!だらだらするなっ!!走れっ!!」
真っ先にとばっちりを受けたゴーダが何度も高砂の鞭を受けてうずくまる。
(あのバカ……何でさっさと逃げないんだよ。)
腕に力が籠って、俺は自分の身体が未だにあけびによって戒められている事に気がついた。
「あの……」
いい加減離せと腹の中では思いながらも、俺は控え目な態度を心掛けた。
「あぁ……悪い。あの人苦手なんだよ、俺。」
(得意なやつなんて、いねぇだろ)
「ところでお前、名前は!?」
「…………ブリ」
直ぐにバレるだろうが、実名を名乗る気になどなれなかった。
俺が関係を持つのは副監視長までだ。
あけびは驚いた顔を見せた後、そうかと一言呟いた。
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