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第三の国
狩り6

ムワッとした熱気が肌をつつむ。


少し水の減った小さな池では、カエルが気持ちよさそうに泳いでいた。


ロックフォールが言った通り、夜にも関わらず俺も汗ばんできた。


「話してみろ」


ロックフォールの顔が真剣な面持ちで、リーダーのそれになる。


「新しい監視長が来るみたいだ」


「そりやぁ、また。高砂が黙ってねぇぞ」


「あぁ……その辺はもうとっくに抗議して、周りの監視に当たり散らしてたらしいよ。今日のゴーダの一件も八つ当たりじゃないか!?」


「はっ!!なるほどな!!がっはっはっ」


「声落とせよロックフォール。どんなヤツかは分からないけど、とにかく要注意だ」


高砂のような鬼畜か、それともそれを更に超える鬼畜か。


「エメンタール、お前まさか……また狩りに行こうなんざ考えてんじゃねぇだろうな!?」


ロックフォールの疑いの眼差しに、俺は瞬間怯んだ。


「まさか!?俺は監視長には手は出さないよ。今までもそうだったろ!?」


「まあな。いくら何でも和神の核に近すぎらあ!!」


「そういうこと」


「あと、なんでか知らねえが、監視長は歴代ブサイクが揃ってるからな。ぶぁっはっはっ」


(またこの男はバカ笑いを)

俺は呆れ返りながらも、辺りに監視の目がないかと意識した。


「だから声を落とせっての!!……ったく。誰か来たらどうするんだよ!?それに、別に俺は相手が多少崩れてても抱けるよ」


とは言うものの、歴代の監視長の顔を脳裏に思い浮かべた俺は……やっぱりちょっと厳しいかもしれないなとひとり思った。


「おお!!ワリィ。まあ、とにかく狩りはちょっと控えろ。今までは高砂のアホが監視長だったから見逃されてたようなもんだ。頭のキレる監視長でも来てみろ!?ひとり疑われりゃ、それこそ他の情報主が動き難くてたまったもんじゃねぇ!!」


「わかってる。でも、たまに下っぱ相手に性欲処理をしに行くくらいなら問題ないだろ!?」


「お前って奴は……」


ロックフォールが呆れ返る。そんな顔をされても、生理現象には逆らえない。


「若いから溜まるんだよ」


「ったく。余計ないざこざを起こすんじゃねえぞ!!」


「りょうかい」


俺は妖しく微笑むと、体の相性だけに的を絞って脳内に相手をはじき出した。





「はあ〜〜〜〜っ。」


ロックフォールがため息とはずいぶんと珍しい。いつも皆を引っ張っていくリーダーもたまには落ち込んだりするのだろうか。


「どうしたんだよ、急にため息なんかついて!?」


「誰のせいだと思ってやがる!!……本当なら、男相手にそんな事すんじゃねえ!!って言ってやりてえがな。お前はまだ若ぇしよ。それに面だっていいんだ、普通に生活してりゃ女たちが放っとかねえだろ!?……勿体ねぇな。俺が変わってやれりゃあな」


「あぁ、ムリ!!絶対にムリ!!相手にも選ぶ権利がある」

(熊みたいな顔してなんておぞましいことを!!)


俺がブンブンと首がちぎれんばかりに頭を振ると、ロックフォールの口元がピクピクと痙攣した。


「冗談に決まってるだろう。お前な……それにしても、もうちょっと気ってモンを使えないのか!?」


「俺はいつでも自分に正直なんで」


ニンマリと笑って答えると、参ったとばかりにロックフォールはクシャッと困ったような笑顔を作った。







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