第三の国
狩り5
大部屋を出て監視たちのための給仕室を抜けると、俺たちは小さな池の側に出た。
中庭とも呼べないほどの大きさの庭。
上役の監視たちの目が届き難いこの小さな庭は、普段ならばもっぱら下っぱ監視たちの愚痴り場となっているが、公に夜伽が行われる今夜はヤツらが女や少年を抱きに行くため閑散としていた。
「ふぅー。暑いな、夜だってのに、まーだ汗が出やがるぜ。そんで!?改まってどうした、エメンタール!?」
「新しい情報が入ったんだ」
「お前ぇ!!また狩りに行きやがったな!?」
俺が和神の情報を集めるために男を抱いているという事実をただひとり知るロックフォール。
昔、今よりも頻繁に狩りに出かけていた時に見つかって以来、俺はこうして何か新しい情報が入ると必ずロックフォールに伝えている。
俺や他の奴隷たちが独自に張った情報網は匿名でロックフォールから国の奪還を望むメンバーに伝えられる。
ただ、万が一にも俺たちが水面下で国の奪取を狙っていると和神側に漏れれば、監視たちは目の色を変えて情報主を探そうと多くの奴隷を拷問にかけるだろう。
そうなれば長い時間をかけて敷いた情報網が全て水の泡となり、こちらにも多くの犠牲者が出る。
そういった危険から仲間を守るため、情報を得た人間は密かにリーダーであるロックフォールにのみ伝え、その後は匿名でみんなに知らされるのだ。
(知らないものは口の割りようがないからな……)
他のヤツらの情報がどんな道筋を辿るのか、もちろん俺も知らされていないが、大方似たり寄ったりの方法だろうと俺は考えている。
口の堅いロックフォールは各自の情報収集法を絶対に誰にも話さない。
「ガキがいっちょ前に色ごとの駆け引きなんてしてんじゃねぇ!!それも男相手に!!」
そう。話さない代わり…………俺の方法にはとことんいい顔をしない。
戦前から付き合いのある俺たちのことを、ロックフォールは自分の子供みたいに思っているから俺の選んだ方法が尚更気にくわないのは無理もない。
ただ俺だって、ここで引き下がるわけにはいかない。
「今はそれより、とにかく聞いてくれ!!この先ちょっと荒れそうなんだ……」
俺の真剣な眼差しを受け止めたロックフォールは、それ以上は口をつぐんだ。
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