第三の国
狩り3
大部屋までの道のりを歩いていると、夜も随分とふけたというのにあちこちから悩ましげな声が耳に届いた。
甲高い女の叫び、少年の切れ切れなうめき、大の男の荒い呼吸。
(……突っ込まれる方だけは死んでもゴメンだな)
どれにも共通している苦し気な声に、一種の拒絶反応が起こった俺は足早に大部屋へと向かった。
「「おかえりー」」
大部屋へ入るやいなや、ゴーダとチェダーが待ち構えていたように俺を出迎えた。
「何だよ二人してにやけて……気持ち悪いな」
「だんな、今日は誰のところに行ってたんですかい!?」
ゴーダが広間で散々からかわれた仕返しとばかりに反撃に出てきた。
「どこの親父だよお前は……別にいいじゃねぇか」
「はぐらかしましたよチェダーさん。どう思います!?」
「これは怪しい」
珍しくチェダーが悪ふざけに便乗している。
(こいつら、後でぶっ飛ばす!!)
「なぁ、俺のことよりお前等ロックフォール見なかったか!?」
「まさかロックフォールとも……ひどいわ!!私とのことは遊びだったのね!?」
ゴーダが袖を噛んで悔しがる。その横でチェダーは、くつくつと楽しそうに笑いを堪えていた。
「……はぁ。そうなんだ。実はお前の他にも夜の相手は沢山いる……済まねぇな。だが、これで許してくれ」
そう言うと、俺は思いっきりゴーダの唇に吸い付いた。
「ん゙ー!!ん゙ん゙ーーっっ!!」
苦しそうに俺の胸を叩きながら、じたばたと暴れゴーダが抵抗を図る。
その手を何とか押さえ込んで、ゴーダが酸欠になるまで俺は口内を侵し続けた。
その様子を見ていたチェダーはついには爆笑し始め、周りにいた男たちも笑いの渦をつくった。
「ブハッ!!エメンタール!!てめー!!ブッ飛ばす!!」
酸素不足と恥ずかしさで真っ赤な顔をしたゴーダは、力いっぱい俺を突き飛ばすと激しく息巻いた。
(キスひとつでこの反応かよ……初々しいヤツ)
おまけとばかりに後頭部を引き寄せてもう一度口づければ、恥ずかしさが上回ったゴーダはついに魂が抜けたみたいに大人しくなった。
「うおっ!!ちゅうだ!!ゴーダとエメンタールがちゅうした!!」
騒ぎの臭いを嗅ぎ付けたパルによって、辺りはさらにやかましくなる。
「よし!!お前とチェダーにもしてやる!!」
がばっと二人を抱え込んでんー。っと唇を近づければ、パルはキャッキャと笑いながら逃げ、チェダーには『ばか』と手でやんわりと唇を押し返された。
「何だ!?お前らそっちの気もあったんか!?」
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