第三の国
リコッタの奴隷2
木造の古風な出で立ちの宮殿は、下から見上げただけではわからないが、屋根には何百という数の瓦が敷き詰められている。
そして、両サイドの天辺に施された大きな梅の飾りは金色に輝き暗闇の中で尚一層その存在を強く主張していた。
俺はただひたすらに闇に輝く梅の飾りを睨みつけた。
勝利国<和神>の国花であり、春になれば甘い香りを放つあの美しい花が俺はこの世の花の中で一番嫌いだ。
「おい!!そこ!! 誰が休んでいいと言った!?」
立ちすくむ俺の様子に気が付いた監視役の男がすかさず背後から俺の背中に向かって鞭をしならせる。
「ーーーーっ!!!!」
声にならない音を漏らし、あちこち擦りきれた布キレ同然の服の背に血が滲んでいく。
俺は振り返って監視役の姿を正面から見据えた。
左手に松明を持ち、ギョロリとした目をせわしなくしばたかせている。
男は黄ばんだ歯を覗かせてまるで俺に見せつけるかのように、その締まりのない口許にゆっくりと薄笑いを浮かべていった。
監視長の高砂。
ユニークな顔立ちと、作業の手を止めた奴隷を嬉々としてイビることで奴隷達の間では知られていた。
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