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第三の国
獄中の計画


――ぅぁぁあ―――




心地よい秋風が牢にも吹き入る晩、俺は誰かの叫び声を聞いたような気がして目が覚めた。


「くぁっ……んんー!!!」


背筋を伸ばしながら大きな欠伸をかます。目尻に浮かんだ涙を手の甲で乱暴に拭うとえもいわれぬ脱力感に襲われた。



夢ぼけていたのだろうか。

することのない投獄生活のお陰で頭も心もぼうっとする。加えてここ一週間ほどは監視の仕置きの手ぬるいこと手ぬるいこと。


嘲るように鼻で笑いを飛ばせば



「あぁ〜、お目覚めですか〜?」


突如かけられた声に小さな悲鳴がこぼれた。独特の語尾が間延びした声。肝が冷えたのはそれが向かいの囚人じゃなかったからだ。アイツは監視に連れて行かれて何故かいない。


「だっ、誰だ!?」


明らかな疑いを持って俺は頭上の通気孔を睨んだ。暗闇で相手の姿は見えない。

「配給人か!?」


毎晩食料を持ってくる白い手の持ち主を俺は勝手にそんな風に呼んでいた。呼ぼうにも名前すら分からないのだからやむを得ない。


ただ、雰囲気で察した。ソイツとは違う。


以前一度だけ聞いたヤツの声はもっとくぐもっていて誰のものかなんて判断つかなかった。


ただ投獄から1ヶ月以上が経った今でも相変わらず毎日何かしら持ってくる。いくら話かけても返答はなく頑なに無口を貫いたまま。


変わった事と言えば、通気孔から落とされるパンや果物に時折見慣れない菓子が混じるようになったくらいだ。



いや、今は配給人よりも



「答えろよ、お前は誰だ!?」


敵か―――




それとも、味方か。






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