第三の国
賭け8*
「ははっ。何だよ今の……あんた流の挨拶!?血、止まらねぇよ」
番号制夜伽の恩恵を頑なに断るあけびだって、エポワスやそれこそ中央政府の重陽にいたなら男同士の経験くらいあるはずだ。
そいつ等とどんな夜を過ごしたかなんて、リコッタでずっと奴隷だった俺は知らない。だけど、挨拶変わりに毎度人の胸を噛み千切ろうとするのか、あんた。
真っ直ぐ見詰める。悪い、やり過ぎた。それが俺の想像した謝罪の言葉で、もしそう切り出したならいつもみたいに笑って冗談にするつもりだった。
――でも、あけびは吐き捨てるように言った。
「別に構わねえだろ…ケツで血を流そうが、胸から流そうが大差ねぇよ」
カッと目を見開いた。初めて聞くあけびのはっきりとした侮蔑の台詞に頭が真っ白になった。
脚を左右に広げられる。
固い股関節が悲鳴を上げ、膝を頭の方に寄せられる。無理な開脚体勢に跨が裂けそうだった。ヒリヒリ痛む後孔をあけびが覗く。
「弄られて気持ち良かったか!?」
無表情に聞きながら舌を突き出して穴周りの皺をなぞる。屈辱的な格好をしながら、ふつふつ沸き起こる感情に毛束を握りしめた両拳が大きく震えた。
「何なら今から同じ目に遭わせてやるぞ!?」
「――――っっ!!」
踵を合わせてあけびの顔面目掛けて振り下ろす。面食らったあけびは防御の暇もなく俺の渾身の一撃を鼻に受けた。のけ反った男の肩を忌々しく蹴飛ばす。
「……俺なんかに心を煩わされて腹が立ってんだろ!?分かるぜ。どんなに優しいフリしても、あんたは所詮和神の人間だからな。物事が思い通りに運ばないと気が済まないだろ!?」
醜い顔つきをしているのが喋りながらでも分かる。でも、どす黒い感情が堰を切ったみたいに溢れ出す。
止まらない。止まらない。
俺と同じだけあんたも傷つけばいい!!!!!
「だったら俺みたいなお荷物をいつまでも抱えてないで、あんたに身も心も尽くす綺麗でご立派な性奴隷をどっかから調達して専属奴隷に仕立て上げろよ!!」
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