第三の国
賭け6*
「お前が勝ったら望みを叶えてやるよ。俺の庇護下が嫌なら好きにしていい。それと、お前がゴーダやチェダーに直ぐに会いたいってんならそうしてやる」
どんな無理をしてでも。そう続くあけびの突飛な提案は俺には十分すぎるくらいの条件が並び立てられていた。
大きな喜びと希望に頬は緩み、同時に懐疑心が胸を過る。
それじゃあ――。
「俺が……負けたら!?」
「誰に何をされたのか話せ」
視線を俺の下肢に向けたあけびはあくまでも高砂との一件を追及するつもりらしい。
「他には!?」
ひとつという事はないだろうと、当然続きがあるかのように尋ねた。
「俺の専属奴隷になれ」
間近で告げられた告白にカッと体が熱を持った。宙ぶらりんの関係にケジメをつけよう。あけびは至って真面目にそう言った。
「今後俺の元にいるなら一奴隷でいるのはやめろ。俺を主として従順に仕えろ」
あけびらしくない束縛するような言葉選びだった。風呂での監視たちの取り巻きや噂になっている事を思えば自然の流れかもしれない。
俺は自由と面会を自尊心と専属奴隷の天秤にかけて比重を計った。考えるまでもなく心は友に傾ぐ。ゆっくりと隣のあけびに向き直り、眼を真っ直ぐに見つめたまま頭を縦に振った。
はだけた襟もとからたくましい首筋が覗く。触りたい衝動にかられて慌てて目線を外す。
深い呼吸をして賭けの内容はと口を開きかけると、その唇に獣のような本能で噛みつかれた。
「んっ……ふぅ、はっ…」
歯列をべろりと嘗め上げられる感覚に対応が追いつかない。逃げても執拗に追いかけてくる舌は俺を捕えるとうねりながら絡まり、舌先を吸う。どちらのものか分からない唾液がだらしなく口の端から流れ落ちた。
「んんっ……はぁ、はぁ…。なぁ、内容……か、賭け……の」
伝わったか分からない途切れ途切れの訴えにあけびは唇を耳に移して艶かしく答えた。
「イカせればいい――俺を先に」
「つ――ああぁあっ!!!!」
うなじに触られながら耳をねぶられ、俺は自分でも信じられないくらいの喘ぎ声を上げた。そういえば耳が苦手だったなと穴を犯しながら聞かれると、塔での初対面の光景がありありと瞼の裏に蘇った。
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