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第三の国
懸け4


圧倒的な力差で後ろをとられたままいると優しい声がした。後孔からは繊細さの欠片もない俺の手当てのせいで鮮血が流れる。目ざとくそれを見つけるとあけびは呆れたように肩を落とした。



「アホ。無理やり引っこ抜くから血が出てんじゃねえかよ。痛ぇだろ!?」



「あんたが来なきゃ余分な傷は出来なかったよ」



「って事は、元からそこには傷があったのか!?」


鋭い切り返しに俺が返答出来ずにいると、あけびは一変して真面目な顔つきになり自分の腰紐を解いて鮮やかな手付きで俺の手首を一つに纏めあげた。



二の句を告げる隙もない。抵抗も出来ないまま肩に担ぎ上げられ、寝台に放り投げ出された。背中をしこたま打ち付けて痛みに頭に血が上った。


「いってぇな!!ふざけんな!!!!気でも狂ったのかよ、ほどけっっ!!」


乱暴な扱いにがなり立てて声の限り叫んでも、あけびは微塵も動じなかった。それどころかヤツは俺の膝を抱えて二つ折りにすると、何の躊躇いもなく血の滴る後孔に二本の指を突き刺した。



「あぁぁぁ―――っっ!!」


内壁を淀みなく激しく擦られる。あまりの痛みに仰け反って涙を流した。頭から爪先までが針金を通したように硬直する。高砂にされた時とも、さっき自分で入れた時とも違う。


まめの沢山ある長い指が強引に肉を割る。入口から奥へ、奥から入口へ。蛇が螺旋を描くように蹂躙していった。




滑らかな肉の間にいくつか違和感を見つけたんだろう。俺から指を抜いたあけびは一度目を外して長いため息を吐いた。




「お前コレ、誰にやられた!?」


糾明を求めた渋面からは、隠しもしない苛立ちと真実を見定めようとするようとする慎重さが伺えた。詭弁や誤魔化しが通用するとは到底思えない。



体も心も逃げ場のないその空気に、俺は目の前の男が監視長であることを強烈に意識させられた。



「黙ってれば時間が解決してくれるとでも思ったのか!?」


首を振る。侮蔑の言葉じゃない。でも、優しさからの口当たりでも決してなかった。喋らない。何も言わない。言えない。知られたくない。


――失望されたくない。


俺が頑なに口を閉ざしたせいで、いつになく重い沈黙が身を潰すように肩にずしりとのしかかった。









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