第三の国
もう一人の咎人2
今日の分の落ち葉を新しく拾って、独房の端に寄せた。23回目の太陽はいつもと同じように昇っている。射し込む僅かな光しか許されない今の俺じゃその姿は拝めないが、さんさんと輝く姿を想像すると心は少し晴れた。
昼を告げる鐘が鳴る。
直にカビ臭い牢番たちがお出ましだ。また俺をイビれると舌なめずりして石段の螺旋を降りてくるだろう。
ふと、仕舞い込んだいちょうが汚れないかと心配になった……。奴らの手が届かない所に置くべきか。どこか良い隠し場所はないか。
服の上から物入れを包みながら独房を一人ウロウロした。
通気孔は……?
バカか、俺は。あんな高い所じゃ届かねぇし、第一風が吹けば一瞬で床のと区別がつかなくなる。
石床の隙間は……!?
挟んで置いても抜く時に破れるだろっ!!
頭の悪い自分に腹を立てていると、何かが動く気配がした。
「―っ!!――何だ!?」
この牢獄は俺一人の筈だ。ここに入った時も前後の牢は空だったし、正面のももぬけの殻だった……。
違う!!
……そうじゃねぇ!!!
「だ、誰だ!!!!!!」
巨木が三本は入りそうなぶっとい通路の向こう。決して光の射し込む事のない正面の独房の一番奥に闇に溶けた黒い塊があった。もぞもぞと動き始めた物体が重たい枷の音を引きずらせて近づく度に不覚にも俺は後退りをしていた。
「だ、誰なんだよ!!」
声がひっくり返る。目を凝らして集中していると、次第に見えてきた人の全容に悲鳴を上げそうだった。痩せ細った体を地に張りつけ、蜘蛛のように手足を動かしながら石床を這って来る。重い手足の枷を引いて、視線はじっと前を見ている。そう。瞬きすることもなく。俺を。じっと。
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