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第三の国
現れた天主10


足が止まる。



「……宝物!?」



前に前にと突き動かされてきた気持ちが、まるで杭に打ち抜かれたように行き場を失った。


一体何の話だと訝る俺の横を、廊下を往来する監視達は目まぐるしく通り越して行った。大量の料理と酒が大皿に乗って次々と運ばれていき、その忙殺ぶりを象徴するように普段ならきっちりと結ばれている階級スカーフが今日はそれぞれの首元でくたびれ果てていた。


「はっ……こ、これは、高砂様!!申し訳ございません!!通例ならば跪拝のところを……今日は朝から離宮全体がこの調子で。どうぞお許し下さいませ!!」


木椅子の監視長の存在に気づいた上監は驚きに目を丸くし、慌てて言葉を繕った。


「くひひっ……予想外に早いご到着だったな。お前たちが焦るのも無理はない。構わん。そのまま準備を続けろ」


「何と慈悲深くお優しいお言葉!!心よりお礼を申し上げます」


廊下を歩く男達は上監を先頭に大皿を抱えたまま低頭して先を急いだ。


外は相変わらずの地鳴り歓声が続く。窓は内外の空気に揺さぶられ、俺の足元も遠い雄叫びが響くようだった。


あちこちで人々は明るく活気づいて盛り上がっている。それなのに、俺と高砂の間には痛い程の静寂さが巻きついていた。







木椅子の車輪が大きく軋んで回り出す。主の歩みに寡黙に応えながら、屈強な従者たちは高砂が正面を固める直前にすかさず俺の周囲を取り囲んだ。



「賢くも脆弱なエメンタール。お前も、なかなかに美しい。くひひっ……もしもお前に私に媚びる程のしたたかさと器量があったなら、専属奴隷にしてやらん事もなかったのにな。んっ!?」



尻に置かれた無骨な手が、服の上から的確に割れ目をなぞった。






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あきゅろす。
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