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第三の国
現れた天主2


あけびは窓際の黒檀椅子にどさりと荷物を置くと肩を回してごく小さな溜め息を吐いた。


俺は寝台の上を這っていつでもあけびが横になれるように体を退けた。ついでに卓にある塗り薬を手に取る。頓服薬もそろそろ時間だ。


「そのまま寝てていいぞ。俺はこれから執務室に戻る」

てっきり横になるものだとばかり思っていたので、俺はあけびの言葉に面食らった。


一体こいつはいつ寝てるんだ……。


同じ寝台を使っていてもあけびは渡り鳥のように巣には戻らない男だった。朝昼は当然のことながら、顔を合わせる夜中の数時間もここ何日かは長椅子に腰かけて難しい顔で書簡と向き合う姿ばかり目にする。俺が眠りついた後に横になり、目覚める頃には居なくなっている。あけびが寝ている所を見たのは、助け出された日だけだ。



「今日くらい休んだらどうだ!?」


何気なく溢した俺の言葉に今度はあけびが声もなく驚愕した。神に誓って言うが、すれ違い生活を惜しんで出た台詞じゃない。



「そのペースで動いてたら、あんた本当にいつかぶっ倒れるぞ」


只でさえ塔と宮殿は手間も時間もかかってるのに、今あけびが倒れれば塔の完成は更に遅れる。そんな事になれば、募った監視の不満は奴隷に向くに違いない。

今ここでこいつを止めてそれが避けられるなら、少しくらい労ってやる。




「貸してみろ」


「は!?何……うわっ!!」


寝台の軋みと共にあけびが俺に跨がる。手にした薬瓶を取り上げられ、蓋が空くと独特の香草臭が瓶から一気に広がった。



「ちょっ、何だよ。返せって」

背面を仰ぎながら取られた薬瓶に手を伸ばす。




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あきゅろす。
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