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第三の国
番号制の夜伽

side チェダー


食器が擦れ合う音。


若い女たちの控えめな笑い声。


男たちの愚痴。


そんなガヤガヤと騒がしい広間の戸が勢いよく開いた。


「静かにしろ!!!!」


鞭で床を叩きつける音が広間に響きわたる。


誰もが一瞬にして話すのを止め、辺りは水を打ったように静まりかえった。



(始まった!!)


(月に一度の地獄が…)



誰も口を開いていないけれど、俯いたその表情が何を物語っているのかは安易に想像がついた。


「くっひっひっ!!さぁお寝んねの時間だよ」


広間に入ってきた三人の監視役の中央を陣取った高砂が、気色の悪い猫なで声を出す。


高砂の手の感触が鮮明に蘇り、俺は小さな身震いをした。体を駆け抜けた不快なものを誤魔化すように俺は左右に頭を振った。



すると俺の手の甲を、温かな手が優しく包み込んだ。


(…えっ!?)


驚いて隣に座るゴーダを見ると、少し照れたように視線は前方にいる監視に向けたまま、黙って俺の手に自分の手を重ねていた。


(ゴーダ……)


ゴーダはいつも敏感に俺の不安を感じとってくれる。その不器用な優しさに俺は何度も救われてきた。


恥ずかしそう前を見つめるゴーダ。そんな親友が今はとても愛しく、そして頼もしく感じた。



俺は手のひらを返すと、ゴーダの手に指を絡ませた。その手のひらの温もりを分けてもらいながら、俺はゴーダの少し速い鼓動を感じていた。



おれの安心感とは異なり、ゴーダは体を跳ね上がらせると、顔には赤みが射した。


「…またお前らは何をイチャついてんだよ」


「あっ!!本当だ!!手なんかつないで!!いや〜ん。ゴーダのス・ケ・ベ」


エメンタールとパルが監視に聞かれないように声を落として、それでも冷やかすことは忘れない。


「黙って前を見てろバカ!!……誰が呼ばれてもおかしくねぇんだ」



ゴーダはいつもの調子で、けれども小声で二人を罵った後、監視たちを強く睨みつけた。



ゴーダの手がだんだん湿り気を帯びていく。それは何も俺と手を繋いでるからだけじゃない。これから行われる事に身構えているからだ。







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