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第三の国
混迷2


「くっ……ひひっ」


ぎしぎしという木鳴りと共に、聞きなれた笑い声が宮殿前に小さく響いた。


歓喜に満ちた監視たちが驚愕の様で背後を振り返る。奴隷たちは、誰もが蒼白な顔でその場に固まっていた。


「おぉ!!なんとっ……実に美しい……これなら御天主様も大層お喜びになられることだろう……私の不在によく頑張ってくれた!!」



手に汗が滲んだ。


額も、背中も。


全神経が張り詰め、心臓が警鐘を鳴らすように勢い良く波打った。



「ま、まさか!!」


「そんなことがっ!!ああ、本物でいらっしゃる」


「お体は……いや、それより。何と凛としたお姿で!!うっ……よくぞご無事で」


振り返った俺は、金縛りにあった。


「すまなかったな。私が不甲斐ないばかりに……このような大事な時期に最後まで立ち合うことが出来ず」


「何を仰いますか。あなた様あってのリコッタ離宮でございます」


「そうですとも。今はあの新参者のあけびが大きな顔をしておりますが、あなた様さえお戻り頂ければ、この地は以前のような厳粛さを取り戻しましょう」


男は、木椅子の車輪を回しながら監視の一人一人に声をかけ手を取った。以前は気にも止めていなかった中監や下監にまで近づいて、少し痩せた顔に笑顔を作った。






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あきゅろす。
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