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第三の国
新たなる監視長4

(な……何なんだコイツは)

突如やって来た新監視長ご一行様に、誰もが度肝を抜かれた。



若い監視たちが、羨望の眼差しをあけびに向ける。


「まったく、あなたと言う人は!!団体行動が出来ないのですか!?」


尚も部下たちに注意を受けるあけびに、俺は首を傾げた。



宮殿と塔にそれぞれいる監視長は、奴隷たちと各監視役の管理を一任されている。


大抵はチェダーのところの高砂みたいな鬼畜がその役を勤めていて、監視長が交代してもいつも同じようなやつが配属されてくるのだが…………この『あけび』という男は全くと言っていい程に監視長らしくない。


「若いな。大丈夫なのかよ、今回の監視長」


「かっこいい」


「ちっ…。頭があれじゃあ下の監視役の奴等に示しがつかねぇじゃねぇか」


ボソボソと聞こえる控え目な声には非難と好奇が募る。




聞こえないわけじゃないだろうに監視たちの酷評を前にしてもこの男は、平然と口元に笑みを浮かべて堂々と立っている。



(ふざけた口調や行動の割には、隙のない笑顔の作り方だな……)


さっきから男が微笑む度にずっと気になっていたことだ。



この男、目が笑ってない。




しばらくすると、新たな監視長の到着を聞きつけた宮殿の監視たちが続々と集まってきた。


彼らはまだ自ら監視長に話しかけるのは躊躇われるのか、ひとつの集団を作って遠目で『あけびご一行様』の様子を伺っていた。




それにしても、奴隷の俺たちに対して監視長が宜しくとは



(こいつ頭がおかしいのか。何で俺が……)



俺は少しだけ顔をしかめた。


「ハハッ。今度は、何で俺がお前と宜しくしなきゃいけないんだ……って顔してるな」


俺の近くに来ると、あけびは屈託なく笑い俺に問う。


(人をよく見てやがる……この若さで監視長に選ばれる理由はこのあたりか?!)


しかし自分の思考が読まれた事に俺は腹が立ち、あくまで相手が気分を害さないように細心の注意を払いながら優しく答えた。



「いえ、挨拶なら俺たちよりも先に……あちらに宮殿担当の監視の方々がいらっしゃいますよ」



口が過ぎたかもしれない。

昼間は大人しく、誰にも関わらないと決めているのに……掴み難い男の行動に、俺は自らのペースを狂わされる。


「あぁ、本当だ。気付かなかった。可愛いな、後で挨拶するか」


(さっさと行けよ。)


心の中で毒づいていると



「ようこそリコッタへ」




一歩


また一歩



誰かが近づいてくる足音がした。


人垣が割れて道が出来る。

若い監視たちが次々に膝をついた。



「私の奴隷たちが何か粗相をしたかね!?」



現れた高砂に、騎乗していた監視たちは素早く馬から降りて頭を下げた。



何をしていたのか、わずかに残った髪は乱れて監視服の腰ひもは緩かった。



上監を前に膝をつかないその姿が気に障ったのであろう、渋い顔をした高砂はあけびの部下には一言も声をかけなかった。



「いいえ、何も。お騒がせして申し訳ない、高砂監視長。本日より塔の監視長の『あけび』です。よろしく」




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あきゅろす。
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