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第三の国
決意4


パルは冗談じゃないという顔で俺を見遣り、繋がった手を払おうとした。だけど俺はさらに力強くパルの手を握りしめてそれを制し、まっすぐに源平の目を見つめた。


「そこまで言うなら、この離宮全体を素っ裸で歩けよ」
椿が壁に肘を預けながら俺を見下ろした。


「ふ、ふざけんじゃねぇ!!お前ら監視の頭にはそんな事ばっかしかねぇのか!!夜伽だ強姦だ、終いには変態行為かよ!!」


腫れた頬でしゃべるパルの滑舌は悪く、くぐもっていた。だけど小さな体から放たれる怒りは廊下に響き渡るほど大きく、監視を恨む想いがこめられていた。





「お前は黙ってろ!!!!」




パル以上の怒声で言い返す椿に、副長としての余裕は少しも見て取れなかった。一人静かに入口に立つ源平だけが、口を挟むこともなく俺たちを見続けていた。

「出来んだろ。何でもするって言ったのはお前自身だ」

監視たちから幾度も受けてきた蔑みの視線。だけど、こんなにも苛立ちの情が含まれた眼差しは初めてだった。


「お前さ、本当は宮殿長だって自分から誘ったんだろ!?被害者ぶって同情引いたって、実際のところは分かったもんじゃねえ。どっちが先に仕掛けたかなんて、誰も見てないんだからな!!」

「いい加減にしろよ!!コノヤロウ!!!!!!」


俺の手を振りほどいたパルが勢い良く椿に飛びかかった。突然の不意討ちに椿の頬に一発が入る。しかしその後はパルの突きをヒラリとかわし、簡単に捻りあげてしまった。鬱陶しいと言わんばかりにパルを見下ろす。身長差のせいで床から少し浮いたパルが、それでも憎いと空いた足で椿を蹴ろうと暴れた。


「おい、どうなんだよ!?」


六つの目玉が俺に集中する。椿も、源平も、パルも俺の返答を待っていた。






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