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第三の国
奴隷たちの恋8


この雨でも、歩き難さに互いに文句を言う監視たちの声がしていた。笠とミノのせいで位までは特定出来ないが、どちらも俺とそう背丈が変わらない。隣り合わせになり完全に気を抜いているような軽い雰囲気が、身を潜める俺の口角を持ち上がらせた。



(――チャンスだ!!)


願ってもいない絶好の機会だった。このままだとエメンタールの行き先を突き止める前に凍え死んでしまう。俺は垣根裏の草が生えた地面に目を凝らした。湿った場所によく生えるあるものを探して――。



「チェダー、どうしたんだよ!?あんまり動くと気づかれちゃうぞ!?」


「パル。あの二人を捕まえよう」


「えっ!?」


「いい!?顔は見られないように、ゆっくり彼らの後ろに回るんだ」


「そっ、そしたら、どうするんだ!?」


「気絶させる――コレを使ってね」


俺は小ぶりな赤い花がついた草をパルに見せた。根についた泥を振り払って、先を折る。すると、土の中で変色していていた根から本来の生なりが顔を出した。


「なにそれ!?」


「夜告げ草って言ってね。そこらに咲いてる分にはただの雑草なんだけど、実は根っ子に眠くなる成分が含まれてるんだ」


「こんな草に!?とてもそうは見えねぇけどなぁ……」

パルがいかにも胡散臭いという顔でしげしげと夜告げ草を眺める。


「うん。一般的には夜に花が咲くからその名がつけられてたって思ってる人が多いみたい。だけど本当の由来は、根を食べると食べた人がまるで夜が来たみたいに寝ちゃうから……らしいよ。ああパル。ダメ!!それ以上近づいたら匂いでやられるよ」


「うわっ!!」


俺が慌てて注意すると、パルはバッと飛び退いた。そのあまりの動揺に俺がクスクス笑っていると、赤い顔をそっぽ向いて隠しながらパルは中腰になってこちらにやってくる監視たちを見た。


「殴って気絶させてもいいけど、それだと今度は見張りの監視たちに気づかれちゃうからね。少し面倒だけど、彼らの後ろに回ってこの草の根を噛ませる。そしたら……」




「アイツラの服を奪って監視に成りすます」


「えっ!?」


「だろ!?合ってる!?マジ!?ウシシシシッ。俺って天才!!」


「しーっっ!!静かに」


「はうっ!!…………でも、それしかねぇもんな。あれなら顔もバレねぇし、雨具も手に入って一石二鳥だ」


パルは合点だとばかりに張りついた服の腕をまくって、俺に一つ相づちを打った。







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あきゅろす。
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