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第三の国
奴隷たちの恋7


「チェダーこっち!!」


「ああ!!」


(ひどいな――。視界が悪すぎる)


少し前を屈んで歩くパルが雨でボヤける――横なぶりの風が吹き始め、いよいよ雨脚が本格化し始めた。そんな中、俺はパルと一緒に塔を目指した。物陰に隠れながらゆっくりと進んでいると監視の一団にぶつかり、頭を低く保って辺りを警戒した。


「あっち!!あっちに行ったんだ」


塔まであと数メートル。監視が見張っている入口近くの垣根裏でパルは中の丸へと続く奥の小道を指さして囁いた。


「でも、あいつらじゃねえ。エメンタールを連れてったのはノッポのやつと、チビの二人だ。確かどっちも中監スカーフ巻いてたよ」


エメンタールを連れて行った監視たちの外見・位・辿った道筋を出来るだけ思い出そうとパルは懸命に時間を遡った。その間に俺は周囲に目を凝らしてどのくらいの監視がいるのかを確認した。



(塔の前に剣を携えた監視が四人……か)



一定の間隔は開いているけど、何かあればすぐさま駆けつけてくるだろう。今は見えないが恐らく塔の裏側にも数人の見張りが配置されているはずだ。ただ中の丸へと続く道はどうあってもあそこを通らなければ辿り着けない。


ここでうかつな行動は出来ない。ましてや、捕まれば後に待つのは地獄だけだ。



「どうしよう、チェダー」


緊張と不安が重圧となって俺を包んだ。ここは慎重に行きたいが、ここで雨に長く打たれればそれだけ無駄に体力を消耗してしまう。


考え込む俺の視線の先からはミノと笠を纏った男たちがこちらに向かって歩いてきていた。






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あきゅろす。
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