第三の国
奴隷たちの恋4
足下から崩れ落ちそうになった。何がどうしてエメンタールが行方知れずになっているのかは分からない。ただ、エメンタールがいないこの状況は俺の思っている以上に深刻だった。
「いついなくなったんだ!?」
「昼すぎ…俺がエメンタールに話しかけてたら監視にバレちゃって。俺は打たれた後すぐに作業に戻るように言われたんだけど…でも……でも、エメンタールは連れて行かれちゃったんだ!!それからずっと帰ってこなくて、俺あちこち探したんだ。でも見つからなくて……チェダー、どうしよう!!エメンタールが死んじゃったら……俺ヤだよ。そんなのっ!!」
「大丈夫。エメンタールは絶対に生きてるから!!あいつは簡単には死なない」
もう日も暮れて暗くなっている。エメンタールが生きてる保証なんかどこにもなかった。だけど、今の俺には信じる他にないから。それしかないから。
「落ち着いてパル。監視たちとエメンタールはどっちに向かったんだ!?」
「なか…中の丸の方」
「わかった!!パルは広間で待ってな。そんなずぶ濡れのままじゃ、本当に風邪ひくから」
全身雨に打たれながら、ぬかるみの道を鐘が鳴ってからずっと探していたんだろう。パルの足には泥が飛びはねていた。膝の皮がめくれて出血もしている。
「ヤだ!!俺も行く!!」
「でもねパル。こんな雨の中でも監視たちは辺りを警備してるんだ。俺たちみたいな奴隷が勝手に動き回ってるなんて監視に知れたら、鞭打ちじゃ済まないんだよ!?」
わかって欲しい。何も意地悪で連れていかない訳じゃない。雨で気配が絶たれるとはいえ、夜伽や特例で呼び出しを受けた訳じゃない奴隷が外をウロウロしているのはおかしい。俺たちはこれまで、抜け道を使ったり監視たちの交代時間を見計らって上手くその目を盗んできたけれど、万が一にも見つかれば生きて帰れるかもわからない。
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