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第三の国
高砂派の強行3


美しい外観とは裏腹に、部屋の壁や床には古くなった血が跡になってこびりついていた。もう随分と使われていないのかどこもホコリだらけで、手足を縛られて床に転がされると辺りにはいつくもの塵が宙に舞った。


かすかに鼻をかすめる鉄の匂い、それと部屋中に染みついている嫌な匂いに五年前を思い出した。



(良く似てる……)


俺はこの部屋にそっくりの場所に足を踏み入れたことがある。体を焼かれ、奴隷数字を刻まれた場所……そこもちょうどこんな風に、人々の皮膚が焼ける強い臭いが染みついていた。



「ここがどこだか分かるか!?お前は昔ここに良く似た場所に来たことがあるだろう――五年前になっ!!」


強引に髪をグッと引っ張られて首がのけ反った。腹に刃を隠しもったまま、細目の監視は力いっぱい俺の髪を吊し上げる。



「―――っ!!」



「ここはなぁ、烙印所って言うんだ――まあお前が印を捺されたのは別の場所だがな」


「ああ、覚えてなんていられないでしょう。何せ奴隷は働くだけが取り柄の能無しばかりですからね」





(ハ……忘れるだって!?)



忘れられるはずがない。何故なら烙印所は、自分が奴隷になったのだと初めて思い知らされた忌むべき場所だから。床に伏しながら、俺は苛立ちに歯が軋むのを感じた。






「皆さん、準備できました。始めましょう!!」



そのやけに明るく、けれども不可解な号令に俺は顔を上げて全員を睨みつけた。監視たちはニヤリと薄笑いをしてただ愉しそうに俺を見下ろしていた。



下監が用意したのは二つの桶で、大きな桶の縁は監視たちの太ももまであるほどの器だった。中監の一人がすかさず腰に提げた鞭を桶の中に浸して勢い良く引き上げる。同時に桶からは大量の水が飛び散り、間髪入れずにたっぷりと水を含んだ革鞭が、素肌をさらした上半身へと振り下ろされた。










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