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第三の国
あけびとエメンタール9

不安そうにしていてもチェダーはこの二週間、一度も『怖い』とは口にしなかった。俺やパルの前だけじゃなく、奴隷たちが集まる場所では下手くそな演技で必死にいつも通りに振るまって見せていた。



「うっ……くっ……」



唇を強く噛みしめても後から後からあふれでる嗚咽がチェダーを困らせる。



俺はその場に根を張ったように動くことが出来なかった。






立ちすくむ俺のかわりに涙を流すチェダーを介抱したのは、源平だった。手をとって再び椅子に座らせ、源平はチェダーの背中をさすりながら優しく声をかける。


「大丈夫ですか!?」


「いえ……メソメソ泣いて取り乱したりしてすみません。もう大丈夫です」


目にいっぱい溜まった涙をゴシゴシ拭いながら、チェダーは深々とお辞儀をした。


「いいえ。大切な友人を思っての事ですから、当然のことです。それに、私は彼を守ってあげられなかった……本当に謝らなければならないのは、私の方です」


「……謝らないで下さい。それに源平さんは、ゴーダが連れて行かれるのをきっと止めてくださったのでしょう!?」


「えっ!?」


虚をつかれたように、源平はビクリと体を揺らして驚きの顔を見せた。


「だってこの二週間、そんな風にゴーダを探してくれたんですから。……ありがとうございます、源平さん」



チェダーが向ける慈しみの笑顔に、それでも源平は戸惑ったような複雑な笑みを返した。




「三の宮の奥に地下懲罰房がある」



これまでずっと黙って俺たちの様子を伺っていたあけびが、やっと重い口を開いた。









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あきゅろす。
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