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第三の国
あけびとエメンタール4

「俺がお前等を呼んだ理由は二つ!!」


あけびは眼前に指を二本突き立て、瞬時に監視長の顔つきになった。


「まずはこの間、チェダーが渡してくれた香の原料だ」

顎を引いて腹に力を込め、俺は真っ直ぐに立った。



この部屋にいると、あの日一人でここに戻ってきた時のことを思い出す。


『仕事だからだ』


俺たちに必要以上の心配りをするあけびに、何故かと問いかけたらこいつはそう答えた。



何を言われても、全てを完全に信用はしない。


相手は、監視長なのだから。


「単刀直入に言えば、あれは淫香だ。ただ、そんじょそこらで手に入る代物じゃあない」


「それって……凄く高価なものって事ですか!?」


「半分当たり。だが、ただ高価なだけじゃない」


「勿体ぶらずにサクッと教えて頂けると大変有りがたいんですけど」


「かっわいくないねぇ、お前。もっとチェダーを見習えば!?」


「放っておいて下さい。この性格は生まれつきです」


警戒心がそうさせるのか。調子が狂って、変につっぱねたような子供っぽい口調になる。


あけびはパチパチと瞬きをすると、俺の頭をもみくちゃにした。


「ハハッ。今のはちょっと可愛かったな!!」


(うるせぇ!!)


「いいから、先!!」


俺は手櫛で髪を撫でつけながら、話の先を促した。やけに愉しそうなあけびの余裕顔が、勘に障る。


「あの原料、この辺りじゃ採れないんだよ」


「えっ!?採れないって…………リコッタではって事ですか!?」


「いや、ここだけじゃない。パニール全土でもこの品種は見つかっていないんだ。だよな!?源平」


「ええ。実に稀少価値が高く医師の間では『蘭香』と呼ばれています。原料は温帯に育つ常緑高木なので、パニールのような熱地ではまず目にする事はないかと」


「パニール全体でもないって……。じゃあ一体、その香はどこから来たんだよ!?」

「二人とも。メディス……知ってるよな!?」


高砂が用意したそこそこ高いだけの香だと思っていた俺たちだったが、到底予想だにしていなかった名前の登場に、二人して目を見張るしかなかった。





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あきゅろす。
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