第三の国 変わらぬ日常 side チェダー 灼熱の太陽は威力を弱め、宮殿造りは大詰めを迎えていた。 「そこ!!しっかり運べ!!それは我ら和神の象徴だぞ!!」 「きゃああ!!す、すみません!!」 「休むなっ!!働け!!」 「ぐあっ!!……くっ」 梅を模した巨大な装飾を運ぶ奴隷たち。装飾を中庭に移動させるために、今日は朝から男女が入り乱れて働いている。 監視たちの鞭が絶えずしなるのも、俺たち奴隷の生活も変わらない。 まるで何もなかったように日々は過ぎていく。 けれど、ゴーダも高砂もあれから二週間が過ぎても戻っては来なかった。 広間での騒ぎの翌日から、高砂重症の噂は瞬く間に広まり、奴隷たちの間でもその事実に騒然となった。 時が経つにつれて次第に忽然と姿を消したゴーダの行方を訝る者も増えたが、誰も大っぴらにその事を口に出さなかった。 そしてエメンタールは、極力俺の側を離れないようにしていた。 もちろん持ち場が違うので日中は無理だが、夜も狩りには行かずにいつ高砂が帰って来ても俺を守れるように、あれからずっと近くにいて気を張ってくれている。 ゴーダのことには一切触れず、時々俺が堪らなく不安にかられるとエメンタールは黙って肩を貸してくれた。 それからパルは、変わらず明るく振る舞っていた。 ゴーダの事を気にしていない訳がないのに 「もう、泣かねえって誓ったんだ!!メソメソしてても何も変わらねえんだ。だから、チェダーも泣くなよっ!!」 そう言っては、俺を励まし可愛い笑顔をふりまいた。 二人だけじゃない。 親しい仲間たちはみんな、そうやって影ながら支えてくれた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |