第三の国
後悔と戸惑い2
「どうした!?大丈夫か!?」
いきなり黙りこくった俺を訝しんだあけびが、声をかける。俺は平静を装いながら拘束から処刑の執行までの時間を問い、何をすべきかを考える。
「考え込んむのは結構だが、いい加減に手を放してやらないとその子、窒息するぞ!?」
俺の腕をバンバン叩きながら、パルが手を放せと訴えていた。その顔は心なしか赤い顔を通り越して蒼くなっていた。
「ぶっふぇー。ゼーッ、ハーッ、馬鹿エメンタール!!死んじゃうだろ!!」
お返しとばかりに蹴りを入れてくるパルの頭支点に腕を突っ張り、距離を取って攻撃を無効にする。届かない蹴りにパルがギャンギャン吠えた。俺たちのそんな様子を見たチェダーが、ホッとしたようにいつもの柔らかい笑みを見せた。
「とにかく、お前たちは一度奴隷棟に戻れ。ゴーダの件は何か分かったら教えてやるから」
「うぉぉ!!ぺーぺーいい奴じゃん!!サンキュー」
「ありがとうございます」
まだ人を疑うことを知らないパルに、普段から誰にでも礼儀正しいチェダー。
一人腹黒い俺は、窓枠に腰かけるあけびを見遣った。高位の軍人に相応しい広々とした部屋の一角で、優雅に蜂蜜酒をたしなむこの男。
チェダーの話に耳を傾けていた時のあけびは真剣そのもので、折々何かを考え込むように口元に手を当てては、再び黙って話に集中していた。
掴みどころのない性格の男がこの時ばかりは眼光鋭く、ブリの一件あたりでは凄みを帯びた雰囲気を漂わせていた。
だが俺にはこの部屋に来てからずっと、気になっていりことがある。
(何で……一体なんでこいつは、俺たちにこんなにも協力的なんだ!?)
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