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無駄な抵抗とはこのことで






目の前に積み上げられたのは辞書やらなにやらで一つ一つが分厚くそして開けば意味不明な文字が羅列している。「ああああ……」悲嘆めいた何かを溜息混じりに吐くと同室していた相手がじとりとした視線を送ってきた。

「判りません」

両手を胸の高さにまで上げて降参のポーズをとってみる。
ぱらぱらと捲れていくページには矢張り意味不明な文字が。

「イタリア語はれっきとした言語ですのできちんと覚えましょうね」
「む、り。不肖音留和雲ちゃんはれっきとした日本人で混じり気ない日本語を愛用しているのでイタリア語なんて覚えられません」

弐織さんの朝から続く(決死の?)講習の甲斐虚しく文法一つ覚えられない私。英語だって中途半端で理解不能だというのに今度はいきなりイタリア語をマスターしろだなんてそんな無茶なことを言われても困るんだよね。生まれたばかりの赤子に走れと言うようなものだよ。でも頑張れば実現できそうな気がする。あれ?じゃあ私も頑張ればマスター出来るのかな?

「やる気あるんですか」
「うんあるある。だからさ、ドラ○もんに頼んで翻訳こんにゃく貰って来るなり魔法で理解できるようにさせたりとかしてよ」
「………………………。」

一番理解不能なことを言い続けてるのはこの私の口なんだろうな。
要するに、面倒臭いのかな。
自主性がないともいう。
矢張りやる気がないともいう。

「相応しくないんじゃない?」

はぁ、と散々溜めていた溜息を吐き出さんとしていた弐織さんに、一言。

「やる気ないし面倒臭いし何より、やっぱりおかしいと思うんだよね」

貴方の溜め込んで吐いた溜息のその数倍私はいろんなモノをこの何日かの間に抱えてたんだよと言うかのように。二言目。

「ボスボスボスボスうっさい」


最後の区切りは駄々を捏ねるような感じで。本音を言えばまだもう少し好き勝手言っちゃいたいところだけど、止めておいた。
話を黙って聞いていた弐織さんは表情一つ変えずに無言で己の持っていた辞書を、

「…………おお?」

ばんっ!
と机に叩き付けるように、寧ろ叩き付けた。「ふざけないでください」いや、別にふざけてるわけじゃないんだけど、ね
本気でそう思ってるのに

「跡を継げるのは血縁者である和雲様だけです」
「そうですか」

そういうのが、うざいのに。
あー。あーあーあーあーぁ。少しだけ引かれたレールから逸れても元通りか。うーん作戦失敗策敗れたり。とは言っても作戦も策も無かったんだけど。

「明日から学校ですのでそれをお忘れなく」
「うぃーす」
「…くれぐれも逃げ出そうなどと馬鹿な考えは持たないように」
「あいよー」
「………逃げたら絶対に捕まえますから」
「その執着心に乾杯」
「……あと15分で夕飯ですからね!」
「いえーい」

脈絡のない会話を振られた。
いい加減に、平凡だった。

Avvelenamento di
colore primario

(自分の名前ぐらいは言えるようにしてください)




あきゅろす。
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