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カフェテラスにて





にこにこにこにこと笑いながら両指を組んで肘をテーブルの上に乗せた体勢でやや猫背気味になりながら視線は私へと注がれている。見つめられている、と感じながらもそれはドキドキするどころかハラハラして思わず目の焦点を定めて見つめ返す、なんてことは出来ずにいた。趣の良いカフェテラスの席は三つ。その内埋まっているのは二つで悲しいことにその一つに座るべき人は現在退席中である。

「沢田くん、」

私ともう一人、その向かいに座るディーノさんの弟弟子という沢田くん(恐ろしいことに彼も何処かのファミリーの次期ボスらしいのだ)は彼に呼ばれて颯爽と来るや否や目の前に鎮座して、今のこの異様な雰囲気を作り出していた。
にこりにこにこディーノさんとはまた違う笑みを口元に浮かべて、

「で、式は何時にする?」
「いやいやいやいや」

黙っているかと思ったらこんな風に聞いてくるのだった。何だこの人いやー!変人!なんて言える雰囲気など勿論微塵も漂ってはいなくてがしっと両手で片方の手首を(逃げられないように?)掴まれながら物凄くすっ飛んだ発言をされた。どうしたらいいんだろう

「俺本気だから」
「話が飛躍し過ぎて判らないよ沢田くん」
「頭と雰囲気で理解できない?」
「理解したくない」

きっぱりすっぱり沢田くんに負けないくらいににこにこ笑顔を作って断固拒否してみた。「そうか…」と若干テンションの下がった沢田くん。一体何処まで下がってしまうのかと思ったら無表情を通り越して何やらとてもとても真っ黒な笑顔を向けられた。悪魔、いや大魔王の微笑。なんて有り難くないものを拝んでしまったんだろうぎゅっと未だ握られていた手の動脈がほんの少し圧迫されるくらいの力が入っていることに気付くや否や「じゃあ身体に教え込むしかないよな」
…………違う世界の扉を叩いてしまった!

「さーわーだくん!」
「何?和雲。他の男に盗られる前に俺のものっていう印も付けとかなきゃな」
「君が車だったらスピード違反で捕まっているだろうよ!」

がたん!と手を無理矢理引かれ立たされながら(強引!)も目一杯抗議する私を余所に黒い笑みを讃えたままの沢田くん。どうしてドキドキではなくハラハラするのだろう勿論それは頷いてしまえば本当にやってのけそうな人だと確信してしまったからだ!誰か助けてなんて叫ぼうにも此処はイタリア。日本語で叫んでも奇声をあげる観光客だと勘違いされるだけ。言葉の壁がこんなにも分厚いなんて!こうなったら

「お、どうした?二人してつっ立って」

救 世 主 様 !

全力疾走で沢田くんから逃げようかと考えていたその時やっと帰ってきたディーノさんの登場に私は心から感謝する。チッと舌打ちが隣から聞こえたような気がするけどそこはまぁ無視してしまおう。
ディーノさんが来たことにより一度中断した茶会を再開するタイミングを迎えて踵を返して席に着こうとする。ぐいっと引っ張られた感じがしてああ、そういえばまだ沢田くんに片手を拘束されてたんだったなと思って、悪寒が走った。

「続きはまた今度、な……?」
「……………………」

物騒且つ戦慄するしかない発言をされた私は夕暮れ時自分を置いていった弐織さんに散々愚痴ったのは言うまでもない。
そしてこれから通うらしいスクールに、彼も居ると知らされたその時の私はさぞ鬼気迫る顔だっただろう

Avvelenamento di
colore primario

(先行き不安どころかお先真っ暗だよ!)




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