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にこりきらきら転びます






「んじゃまー一通り探索でもするか?」

これまでの人生学んできた常識などを覆すような世界へと謀らずとして入り込んでしまった私は現在弐織さんの元から(あの野郎報告やら何やら忙しいとか抜かしてどっか行きやがった逃げられた)離れ金髪で長身のお兄さんと共にいた。何やら弐織さんの旧友とか何とかで自分が付き添えない代わりにこの人を付き人代わりに呼び寄せてくれたのだった。ていうか、連れてけよ私も。正常に起動しない頭でちらちらとこのお兄さんの情報を、聞く限りではきゃ、キャバロネ?キャバッローネ?キャッバローネ、バッキャローネ(もうどうでもいいか)ファミリーのボス、らしい。ボス、ボスボスボスボス。そして僭越ながらこのわたくし音留和雲も何とか(名なんてもう覚えてないけど)ファミリーの次期ボス、らしい。やれと言われた訳じゃないけどやらなきゃ色々とやばそうな気がするので拒否権を自ら放棄して引かれたレールに沿って行くことに、しようと決めた。前言撤回本当は今直ぐ帰りたい。「和雲?」なんて名乗ってから数分もしないうちに早速呼び捨てで呼んでくれたお兄さん、ディーノさんに



「はいはい」


ババ臭い返答を返して私は生きてますと主張。どうやらエスカレーターを使用するらしく(所謂放心)状態だった私では動く階段は踏み外してしまうのではなかろうかと心配して声をかけてくれたらしい。

「大丈夫か?ビルの屋上から飛び降りそうな顔だったぜ」
「大丈夫です。少なくともビルから飛び降りれるぐらいの勇気も絶望もまだないですから」

にっこり。
きらきらーん!なんて星が飛び散らない程度に笑顔を浮かべた私に「そうか、なら此処で足滑らさないようにうわぁぁぁぁあっ!?」
……………。

「ディ、ディーノさん?」

一体何が起こったのやら突然ディーノさんは私の視界から消えてしまった。びっくり手品か何かだろうかと一瞬思うもエスカレーターの終点地点に倒れこんでいる金髪の男の人を見付けたのでもしやと考えて早足で下に降りた。どうやら何処かで足を滑らせそのまま転がり落ちたらしい。ミラクル。躓くことはあっても滑るなんて聞いたことが無い。バナナの皮でもあったのかと確認しようにも逆走するのは愚行だと感じたので止めておく、うん。

「いてて………」
「だ、大丈夫ですか?(一応救急車とか呼ばなくていいのだろうか)」
「はは……またやっちまった…」

力なく笑う姿も何故かきらきら輝いてるようなオーラを纏うディーノさん。結構な高さから転がり落ちたのに擦り傷一つ見受けられないのは流石、と言うべきなんだろうけど何だかもうフォロー仕切れないほどにドジだ。この人絶対ドジっ子だ!

「だから気を付けろって言ったろ?」
「(私じゃなくて貴方が気を付けてください)」

よ…っと、と立ち上がったディーノさんは彼が落ちたことによりそれを目撃した人々がざわざわとざわめくのも無視して、且つついさっきごろごろ転がっていた人間が浮かべるような笑顔じゃない笑顔を振りまいて(無自覚)「そんじゃ行くか!」と声を上げた。
そうですねも待っても言う暇が無いまま私はまた手を引かれることになる。

「探索してそれが終わったらどうするんですか?」
「そうだなー…」

外へと続く自動ドアをくぐると見慣れない風景が見えて、日本じゃないと実感させられた。時差惚けは不思議なことに全くといってない。ふと母国にいる両親や兄妹はどうしてるのだろう。血の繋がりもない偽物の、仮初めの家族だったとしてもあそこで過ごした時間はとても心地が良かった。だから別に血縁なんて関係ないと思っている。余談が過ぎたけど要するに心配ってことだ。
空港から近くの街までどうやって行くのか尋ねようとしたら探索が済んだ後のことをまだ考えていたらしいディーノさんは「あ」と声を漏らした。
コツコツコツ。足音一時停止。

「終わったら、俺の弟弟子でも紹介してやるよ!」
「弟子?」

いやはやまたもや普段聞き慣れない単語が出てきたのでびっくり。

Avvelenamento di
colore primario

(そして彼は段差で転んだ)




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