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僅かな余談と序章




メモ紙みたいな紙をびりびり中途半端に切られてサラサラと何処から出したのやらペンで何かを書いて「はい」と渡された紙に記されていたのは携帯の電話番号らしきものと、メールアドレス。そして” Un'orchidea Bianca”という単語。まさか日本でイタリア語を拝むことになるとは。意味はまぁどうでも良いとしてその利用価値も無いソレをどうしようかと思考する。ものの数秒も経たない内に「捨てよー!」という考えに至ったのだった。しかしながら此処は路上。ポイ捨て禁止。環境保全を掲げたつもりは全く無いけれども道端に塵を捨てるなんてことは常識としてアレかと思うので家に帰ったら捨てようと思う。そんなわけで帰宅してからの最初の行動はゴミ箱にびりびりと破いた紙を捨てるというものだった。それから後は荷物の整理をして明日の出発に向けての準備をした。何で過去形なのかというと表現の通り過去のことだから、だ。
ついでに言うと現在位置は、

「…ほー」
「―とりあえず馬鹿みたいに開かれた口を閉じてくださいますか」

現在位置は、馬鹿でかい建造物の前。
その入り口付近で立ち止まる私を弐織さんが振り返りながら「早く歩け」と視線で伝えてくる。それとは別に発された言葉には相も変わらずの口調で毒を吐かれた。思ったんだけど従者とか何とか言っておきながら全然敬うような気持ちが微塵も感じられないのは何故だろう。逆に敬われても困るけど。「ていうか何此処」何処ぞの会社にしては入り口のセキュリティが半端ない。テレビぐらいでしか見たことない認証システムが設備されてるんだけど。「人の話を全く聞いていなかったんでしょうか、先程説明したような気がしますが」「うんじゃあごめんもいっかい説明よろしく」嫌な予感がしなくもないけど。「…………。」「さぁさぁ遠慮は要らないよ」適当に茶化してみる。はぁと溜息を吐かれた。



「…我々の現アジトです」


…………。


「いきなりだけどアイリターントゥーザホーム!」
「何を今更言いますか」
「離すがいいよ。アイリターントゥーザホーム!」
「此処はイタリアですので英語ではなくイタリア語で喋ってください」
「英語は万国共通だからね?アイリターントゥーザホーげっほげほ」
「大丈夫ですか」
「とりあえず首根っこ掴んで引き摺るのを止めよう」
「足を掴まれるのをご希望ですか」
「責めて腕にしてくれないかなていうか嫌でも引き摺るんだね」
「こうでもしないと言う事を聞かないと学習しましたので」


言いながら尚も静止の声など聞かずにずるずると引き摺られる。あっという間に認証をクリアされて自動ドアが開いた。「ちょっ…」何も紡げないまま中に入ってしまった。


「あー…」



万事休す。ウィーンと閉まる自動ドアを見つめながら、嘆息。


「帰ってきてから付き合ってもらいたかった用って、これ?」
「そうです」



逃げるような素振りも見せなくなったからかやっと弐織さんは首根っこを掴むのをやめる。ほんの少し残る息苦しさに首元をさすりながら問えば予想通りの答えが返ってきて。



「現在亡きボスの代わりに此処を取り仕切っているある御方から和雲様との対談をと命じられましたので」
「……はぁ、さいですか」



それはつまり、今の時点での最高権力者のことだろうか。





Avvelenamento di
colore primario

(へらへら笑う余裕すら、ないんですけど)




あきゅろす。
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