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拒否権無しの脅し事





「と、いうことで貴方がファミリーの次期後継者というわけです」
「………え、何が?」

あれよあれよと連れ去られ飛行機に半ば無理矢理に乗らされ今正に飛び立たんとしているソレに時間ギリギリで席に着いた途端、後で詳しくと言っていた弐織、だっけかそんな御人は急に説明をし出した。仮定も出さず最初に結論を言った。なので意味が分からない。これで判れというなら相当な無理難題だ。Q.E.D!なんて言えないよコレ。

「意味がよくー…」
「これを見てください」

ぴら。と薄っぺらい何かを目前に出される。
何これ。てかち、近いんですけど。近すぎて全体像が捉えられないんですけど。ぴったりと座席の背凭れに頭をくっ付けるようにして距離を取るとやっとまともに見えるようになった。「誰?」
写真に写ってるのは細身の男の人、だった。

「これが貴方の本当のお父様です」
「へ、へぇ……えぇ!?」

何ですと!?と大声で叫びたくなるような言葉。ちょ、待ってください、今、何と?
この写真に写ってる人が本当のお父様?お父様?様?いや首を傾げるとこはそこじゃなくて、

「私にはお父さんが二人居るんですか!」←苦しんで出した結果こんなものに。
「いえ、アレは替え玉です」
「ラーメン!?」
「いえ、違いますが」

クソ真面目に否定してくれた弐織さんは私の動揺など気にせず淡々と続けて言葉を紡ぐ。果たしてそれに付いていけるのか、判らないていうか絶対付いていけない。
だって、ほら。攫われた当初から思考回路はショート寸前。今すぐ会いたいよじゃなくて要するに頭が、おかしくなりそうなのだ。攫われて運ばれて何故かイタリア行きらしい飛行機に乗らされいきなりファミリーの跡取りと言われ。つかファミリーって何?家族でしょ。家族の跡取り?……意味が判らないです、本当。

「和雲様が生まれた当初は十代目である明人様とその妻鏡花様とお過ごしになっていたのですが、とある事件で十代目は奥様を喪いそれをきっかけに、貴方様まで喪わぬよう貴方を守る為にお傍から離れ、日本に居る替え玉の下へ送られたのです。それが今、貴方の言うお父様お母様というわけですね。しかし実際には血は繋がっておらず養女、という形での家族でしたが、存じませんでしたか?」
「……存じませんでした」
「そうですか、では話す前だったのでしょうね」

理由なくして閑話休題。

「…で、何でいきなりこんな風な形で再会を余儀なくされてるわけ?」
「事態が急変したんです」

一通りファミリーというものの説明やら何やらを聞きようやく表面上だけ落ち着くことが出来た私は新たなる疑問を彼へと向けていた。
半ば無理矢理に理解させた頭は現在進行形で破裂の一途を辿りながらもそこはまぁ無視して、続き。

「つい先日ファミリー間の抗争が起き、まぁ抗争なんて日常茶飯事起こるようなものなんですが」
「うわぁ退屈しなさそう」
「ええしませんとも。安息も致しませんが。で、その抗争中にですね」
「はぁ」
「十代目がお亡くなりになられたのです」
「ほうほうってちょっと待て」
「申し訳ありません。ですので遺影での再会となります」

いや、そこ謝るんじゃなくて。つまり私が言いたいのは、その、アレだ。
実は今まで父だと思っていたのは義父でその本当の父は抗争で、亡くなった、と?
話が飛躍しすぎてやっぱり判らない。
うーん、夢、とかいうオチでもなさそうだしなぁ。困った。

「跡を継げるのは血の繋がったたった一人の娘である和雲様しかおりません。私は早急に和雲様を引き戻すために来たのです」
「私一般人なんですけど」
「別に着いてから直ぐに執務やら何やらをこなせとは言いません。心の整理なども必要でしょうから、先ずはこちらの世界を知ってもらうために学校へ行ってもらいます。」
「学校?」
「マフィアに通ずる者達が通うスクールです。そこで必要なことを学んだ後、正式に就任してもらいます」

つまり拒否権はなし、と?拒むも受け入れるも自由ですが此処まで聞いてしまったのならば受け入れないと都合が悪くなってしまいます。脅しだねぇ。そうですねー


「と、いうわけで貴方がファミリーの次期後継者というわけです」

そして冒頭に戻る。


Avvelenamento di
colore primario

(将来は定められ拒めば死を迎えるらしい)
(誰に文句を言えば良いの?)




あきゅろす。
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