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心境の変化を説く





人生って何が起こるかわからない。例えばいきなり変な黒服の男に連れ去られて裏世界の住人の仲間入りをさせられちゃったりある日とあるファミリーの次期ボスさんに初対面でプロポーズされちゃったりそんな常識も何も通じないような世界の中で幸か不幸か初恋の人とびっくり再会しちゃったり生まれてから死ぬまできっと一生触らないだろうと考えていたモノに触れたり、色々、本当に有り得ない事が起きた。人生って何が起こるかわからない。それは周りの風景、状況の変化だけじゃ飽き足らず人の中身まで、心まで変えてしまう。それは単なる事故で、誤差で、不祥で、不具合で、間違いなんだけれども、絶対にあってはならないことなんだけれど、怒ってしまう。例えば当時多少好意は持っていたもののそれ以上の域は超えない寧ろ疎ましさの方が微妙に多かったりした相手にしかもつい先刻まで無自覚に想いを寄せていたとか。そういうの全部。事故で誤差で不祥で不具合で間違いの上に起こった変化である。人生って何が起こるか本当にわからない。と思った。

「で、経過は?」
「滞りなく!」

昨日の一件から一夜明けた今日。私と沢田くんは並盛という町に来ていた。何でも沢田くん個人の用事があったらしく早朝叩き起こされて仕舞いには引き摺られて無理矢理連れて来られた場所は工事現場。トラックの音やら人の声やら騒がしい中建設中という看板も通り越してずんずん進んでいく沢田くんの後に続く私。そしてその沢田くんの隣には此処の責任者らしい人が工事の進み具合を沢田くんに報告していた。とりあえず私には関係のなさそうなことなよう。手持ち無沙汰だーどうしよう。徐に取り出した携帯はイタリアを発つ前に電源を切っていたままで画面は黒い。電源ボタンを押して液晶に光が灯るのを待ちながら空を見上げてみた。雲一つない青空。「上ばっかり見てると躓くぞ」「そーだねぇ」会話の合間に私へとかけられる言葉を適当に流す。目線を合わせて話をしないのは別に恥ずかしいわけじゃない。相変わらず空を見つめたままの私に沢田くんは一つ溜息を吐いて何時ものように手を繋がれた。今やそれだけでも無駄に胸がドキドキするのを止められないけど敢えて平然を装いながら携帯を見つめる。新着メール。
……多っ

「すっげ…」

率直な感想をぼそりと呟いてから一つ一つ内容を確認して、暫しの間返信に没頭。

「和雲」
「……え、あー…話終わったの?」

問うとああ、と短い返答。そしてそのまま踵を返して来た道を戻りだす。未だ手を握られたままなので着いて行く他無い。というか別に握られてなくても着いて行くんだけど。「此処何?」「何って工事現場だけど」「何造ってんの?」「…企業秘密?」なんじゃそりゃ。

「冗談。地下にアジトを造ってる」
「…うわあ訊かなきゃ良かった」

この上もなく訊く必要のない内容だった模様。そして沢田くんの未来設計的なモノを聞かされる羽目になってしまった。日はまだ沈まない。


Avvelenamento di
colore primario

(滞在二日目。)




あきゅろす。
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