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夕暮れ時の憂鬱






アンビリーバボー。
小さな声で呟いた私に無言で対応する沢田くん。何じゃこりゃ。二階に上がり自分の部屋を空けた瞬間「アンビリーバボー」「………。」まぁ冒頭の呟きに戻っちゃうんだけど、アレだ。

「物の見事に散らかってますな」

腕を組んでうん、とう頷くと隣で「はぁ」という溜息が聞こえた気がしなくもないけど気にしない。部屋はあの日弐織さんに拉致られる前の様子のまま、存在していた。つまり本が散乱し机の上には開きっぱなしのパソコンと開けっ放しのお菓子の袋とかが、ていうか誰も入らなかったのかよ。無言の上無表情で立っている沢田くんは放っておいて簡単に片づけを済ますとしよう。
閑話休題。

「お母さん」
「何ー?」

沢田くんを二階に置き去りにしたまま一階へと下りた私は台所でお茶の用意をしていた母の隣へ顔を出す「沢田くん泊まりだけど」「みたいねー」そして沈黙。

「…え、寝る部屋は?」

それっきり鼻歌を歌いながらこぽこぽとお茶を注ぐだけの母に問うと「えー?」と返される。返答になってない。家には客が眠れるような部屋がなかったような気がするのだけど。どうするのだろうか。

「一緒に寝ればいいじゃない」

………。

「それ親として間違った発言だよね」
「だってお部屋ないんだもの」

着眼点が違う!
私が重要視しているのは”沢田くんと一緒に寝ること”であって。だけれど母が重要視しているのは”寝る場所”であって。何か違う。ズレてる。どうしたらいいのだろうか。修復不可能だ。何か駄目だ。「まぁそういう話は後にしてお茶にしましょ」にっこりと微笑まれて絶句。

「……有り得ない」
「何が?」

処変わり、私と沢田くんは二階の部屋で向かい合わせに座っていた。テーブルにはノートと教科書が広がっていて夕飯の買い出しに出かけた母を待つ間沢田くんに勉強を教えてもらっている間のこと。ぽそりと呟いた私の言葉に俯いて問題を見ていた沢田くんが顔を上げて問い返す。「今日一緒に寝ろって言われたんだー」と軽はずみな返答なんて出来るわけも無く無言で唸る私を沢田くんが訝しげに見ていた。

「あ、あはは…」

とりあえず笑って済まそう。


Avvelenamento di
colore primario

(どうでもいいけど此処間違ってる)
(え、嘘だー)




あきゅろす。
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