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進む為に前進







「和雲様!」
「んあ?」

ばーん!という扉が開け放たれる音と共に食事の場にやってきたのはつい数時間ほど前一人でそそくさと帰ってしまった筈の弐織さん。あんぐりと口を開けたままだったのを閉ざしながら(行儀悪いけど)箸に摘んだモノをまた皿に戻してから自分の従者の方を見る。椅子を引いて立とうとしたのを弐織さんの両腕が伸びて私の両肩を掴まれた所為で防がれた。「ご無事でしたか……!」「は?」切羽詰まった声で紡がれた言葉に思わず首を傾げてしまう私。

「お怪我をなさったと聞きました…!」
「え、誰から?」

沢田くんの方を何気なく見たら細められた瞳。お前かよ。「何かあったら連絡してくれって言われてたんだよ。俺に非はない」肩を竦めながらの一言。それはそうだけどたかが腕の裂傷一つでこんなに慌てる人だったろうか。「落ち着いてくださーい」べしんべしんと弐織さんの腕を叩く私。肩が激しく痛いです力が強すぎて。そして守護者の皆さんの視線が痛い。

「…と、とりあえず場所変えたいんだぜ」

ずるずる弐織さんを引きずりながら部屋から出る。何か立場逆じゃないかこれは。


「大した怪我ではないんですね……」
「大した怪我ではないよ」

処変わりボンゴレ邸での(仮)私の部屋。道中実戦的な何かはまだ早すぎたとか何とか色々ブツブツとお経の如く呟いている弐織さんを引き摺りながらやっとこさ部屋に着いた頃には何時もの態度に戻ったようで冷静な言葉をかけられた。立ち尽くしたままの彼は放っておいてぼすっとベッドに腰を落ち着かせる私。心地良くもない沈黙が広がるけど無理矢理に話題を提供する気は起きない。なのでしーんとした空間で弐織さんが口を開くのを待つことにしてみた。「すいません」然程時間も経たずに聞こえたのはこの何分かの内にもう幾度となく聞いた言葉。

「もういいって」

根に持つタイプでもないし。
まだ部屋に置いてあった銃を、今度は投げずに自ら手にとってみる。やっぱり重いし若干怖い。

「今回の事で色々分かったこともあるし」

そう、色々。思い知ったし学習もした。その上で不覚ながら沢田くんに弱音も吐いた。今だってその一言は本音だ。だけど少しだけ、思い当たることもある。「ちょっとお願いがあるんだけど」銃の安全装置(セイフティ)は解除しないまま、弄ぶ手を止めて。



「一度日本に帰っていい?」


最初で最後の悪足掻きをしにさ。

Avvelenamento di
colore primario

(マジですか)
(マジマジ)




あきゅろす。
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