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くるくる苛立ちその他諸々






「ごきげんよう。沢田くん、獄寺くん」

ぺこり、と礼儀正しく御辞儀をして顔を上げれば「……………」「…………ぷっ」獄寺くんは口をあんぐりと開いて驚いたかのように目を丸くして持っていたシャーペンをぽとっと机上に落とし、沢田くんは私を一瞥するなり含み笑い。

「……誰だお前…?」
「凄い格好だな」
「あらそうかしらおほほほほほ…………もう嫌だ…!!」

乱暴に椅子を引いて机に置いた鞄の上に突っ伏して「あああああああああぁ」と口に出して表現仕切れない感情を出そうとするも出し切れずにもやもやとした何かが胸に残る。何事かと突き刺さる(主に獄寺くんからの)痛々しい視線を感じながらもひたすら「あ」を繋げて嘆く。数分余り奇声を発したところでがばっと顔を上げると斜め前に居る獄寺くんがびくっと体を強張らせてまるで珍獣でも見るかのような微妙な表情をされた。

「何、この巻き毛。イメチェンか?」
「誰のせいだと…!」

未だ含み笑いの抜けない沢田くんを睨むとはっと我に返った獄寺くんに「十代目にンな視線を投げ掛けるんじゃねぇ!」と言われた。それが何だかムカついたので「うるせー黙れドアホ!」という叫びと共にべしっと獄寺くんの知識の詰まる頭を平手打ちしてやる。そしたら勢い余ってごんっと机にまで頭をぶつけてしまった。あーいいやもう知らね。

「このカス女……!!」
「私に罪はない!」

相変わらず沸点の低い獄寺くんは案の定私の態度が気に食わなかったのかがたがたがたっ!と椅子が引っ繰り返るんじゃないのかっていう勢いで立ち上がった。喧嘩売るなら買いますがと言わんばかりに私も席を立つ。
二つの椅子が同時に引かれ大きな音を立てたら一瞬教室がしん、と静まり返った気がしなくもないけどそれは「大体何なんだよその格好は!!」「こっちが聞きたいわ!!」という私と獄寺くんの大きな声で騒がしくなる。何なんだよその格好はと私自身が自分に問い詰めたいところだ!「あと少しでHR始まるけど」なんて関係のないことを言う沢田くんに視線を向けるとにこりと爽快さと黒さの混じる笑顔。おお、怖い

「で、昨日の午後から今日の朝にかけて何があったわけ?」
「……………」

にこにこにこ口角だけ吊り上げていて目が全然笑っていないのを果たして沢田くんは気付いてるんだろうか。否と言わせないような眼差しに無言で応戦していたらオーラまでもが黒くなりました。朝から怖い。獄寺くんが何か言おうと口を開きかけたのをちらりと流し目で見やるだけで沢田くんは自分の部下を黙らせる。気付けば静寂に包まれていた筈の教室もいつのまにか元通りの活気を取り戻していて程よい喧騒が漂っていた。ソレに紛れる程度の小声で愚痴ろうと口を開いた。「うちの保護者が……」……やれ作法だーやれ言葉遣いだー身なりだーとツッこむ間もなくあれよあれよと流されて。んで、気付いたら

「この何処かの令嬢みたいな巻き毛になったっていうわけか」
「軽くお○夫人だよ!!」
「ぶっ…!」
「笑うなカス寺!」
「あぁ!?」
「まぁやり過ぎではあるかな」
「いやいやいやそもそも事の発端の元凶は沢田くんの所為だよ」


何我が家にまで連絡入れちゃってんの?そうでもしないと来てくれないだろ?
にこにこにこにこ。いらいらいらいら沢田くんは何食わぬ顔で私はそんな沢田くんを睨み上げる「……何?誘ってんの?」こんな時までふざけたことを抜かすこの人は本当に何なのだ。「まぁ別に俺は何時ものお前で良いんだけどな」「是非ともそれはうちの保護者に直接伝えてほしいね」「嫌だ。面白いし」「あ、今ちょっと殺意抱いた」「愛にすり替えろ」無理だ。

「………とりあえず髪をどうにかしてくる」
「どうやって?」
「……水に濡らして無理矢理戻すとか水に浸して無理矢理戻すとか」
「どっちも同じような意味だから。止めとけ」
「嫌だ!こんな屈辱的な髪型…!」

既に手櫛とかでゆるゆるカールになりつつある髪を頭から水を被って元に戻そうと思い教室の扉へ向かう私を沢田くんが肩を掴んで止めようとするけど構うもんかと廊下へ出るために歩を進め扉に手をかけようとしたらひとりでに扉が開いた。

「お、ツナ」

突如として現われた人物に思わず正面からぶつかりそうになるのを沢田くんが引っ張ってくれたおかげで何とか回避する。危ない。

「………山本」
「小僧にあと一日くらいは休めって言われたけどよ、流石に登校しなきゃやべーと思って」

ははっ来ちまった!と声が降り掛かる。…どうやら沢田くんの知り合いみたいで山本と(山本?)呼ばれた御人は親しげに話し掛ける。まぁ私には関係ないしとにかくそこをどいて私を通して欲しい。早くこの髪型を何とかしたいのだ。「あの」「…ん?」道を開けてくれませんかと開いた口が塞がらなくなりました。



「………武くん?」

初恋のYくんが目の前に。


Avvelenamento di
colore primario

(人違いだったらどうしようとか考えてみた)




あきゅろす。
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