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ボスの彼女





内面的に面倒臭がりとかやる気ゼロとか怠け者とかそういった言葉が合うような感じ。人の上に立つとかリーダーになって指揮をとるとかそんな立場には興味もないし自ら進んでやりたくなんてないと考えている。責任なんて背負いたくない。何故かって訊かれたらそりゃあ面倒臭いし背負ったら背負ったで相応の責任を取らないといけないしやっぱり面倒臭いし?以下エンドレスリピート。なので省略。そんな私がマフィアのボスなんてできっこないんだよね。早く気付いて欲しいです。以上音留和雲の虚しい独り言でした。
そして話は変わる。

「落とし物、ですよー?」


御処はとある学校の何処かの廊下。今日も何処かで響く怒号やら何やらをささっとスルーしながら私は拙いイタリア語で前を歩いていた女の子の肩を叩いた。驚いたかのように振り返った彼女は私の言葉と私が持つ本を見て「……あ」と声を漏らす。そして私を凝視。でもそんな視線には残念なことにまだ気付かない私はどうぞと落とし物を手渡して立ち去ろうと一歩を踏み出してしまう。

「………ありがとう」
「あー、どういたしまして」

振り返ってにこりと笑顔。イタリア語での会話はなるべく手短に済ませたいんだよね。あまり理解が出来ないから。そんな私のことなど露知らずその女の子は微妙に離れていた距離をまた近付けてくる。よくよく見れば右目に眼帯をしていた。でも可愛い女の子。でも髪型は………ぱ、パイナップルに似てる……!思わず吹き出しそうになった口を手で押さえて視線をばっと逸らす。早く立ち去りたいのに何となくそれはダメな気がした。

「クローム髑髏…」
「へ、え?」

どうやら自身の名前という情報を提供してくれている模様。突拍子な自己紹介をされ微妙に私は面食らった。前置きなしかよ!なんて思いながらも名前を名乗るタイミングなんて人の自由なので敢えて気にしないでおこう。第一こんな出来事は弐織さんに攫われたときのことや初対面同然だった沢田くんにいきなりプロポーズされたという出来事とは比べものにならないくらいの小さなことだ。───そのまま無言なのも失礼だと思ったので倣って名前を言おうと口を開くと「……いい。名前、知ってるから」と見透かしたかのような返答。

「音留和雲、さん」
「………エスパー?」
「……違うよ」

じゃあ何だ。ちょっとだけ疑念を持ってみる。弐織さん流マフィアの心得其の一、近付く人間はとりあえず信用するな。油断大敵。眉唾だけど実行してみる。ちょっとだけ痛む良心も無視。でもって怖いので逃げようと距離を少しずつ開けようと後退り開始。クローム髑髏さんは首を傾げて私の行動を見ている。敵意とかそういったものは感じられない。けど後退り。

「…じゃあ私はこれで」
「…ボスの彼女、って」

訊いて写真も見せてもらってるから、知ってる。と。
突然に告げられた言葉に後退させていた足が止まった。そしてよくよく考えてみると名乗り終えた辺りから彼女は日本語で私に喋りかけていた、ような気がする。ちょっと待てや。と数日ぶりの脳内を混乱させる出来事に絶句してしまう私。宜しくねと言われ宜しくと返している最中も口だけが動いて言葉を発しているみたいだった。それから何かを話して別れて教室までフラフラしながら帰った。
頭の中で物事の収拾がようやくつくのはあとどれくらいだろうか。
とりあえず。
…………彼女じゃないってことは言っておくべきだった。


Avvelenamento di
colore primario

(あと写真って何)




あきゅろす。
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